高放射線地域住民のリンパ球は放射線の影響を受けにくい

  • 2011/09/06(火) 14:26:12

世界の高放射線地域に住む住民の癌になる率が変わらないようで、放射線は心配ないとの説が日本で最近強調されるようになった。しかし、エビデンスに基づいた説か検証したい。

まず世界の高線量地域はどこにあり、どういう放射線があるか、その線量はどれくらいかについて述べる。次に、そういう場所に住む住民についての発がん状況については日本の財団法人が良く調べているようなのでそれを引用する。次いで、高線量でも影響を受けにくい理由についての最近の知見を述べ、日本人が現地住民並みの抵抗力を持つようになるのはどれくらいの年数を必要とするか推測したい。

自然放射線レベルが世界平均より極めて高い地域として、イランのラムサール地方(ラドン224で10mSv/y前後)、インドのケララ地方の海岸沿い(トリウム232、約4mSv/y)、ブラジルのガラバリの海岸沿(トリウム232、5-6mSv/y)並びに中国南部の広東省揚江(ラドン224が主でウラン238も含む、合わせて2-5mSv/y)がある。

以上の放射線はいずれも何十億年も前からずっと地球上に存在していたので自然放射線といいます。自然放射線には上述のラドン、トリウム、ウランのほか主なものはカリウム40とか炭素14です。

一方、原爆ないし原子力発電所から放出するものは人類が人工的に作ったもので、人工放射線といい、出現から70年も経っていないので生物はまだ対応能力が備わっていないと見るのが一般的です。

次に高放射線の各地域に住む住民の発がん性については財団法人などで現地に赴き発がん性調査などを行って差がないと報告している。

イランの高汚染地域に何世代にも亘り住んできた住民(最高260mSv/yを含む)とその近くの正常放射線被ばく住民との間には差が何故ないかを次の試験で検討した。M.Ghiassi-nejadら(Health Phys. 82(1):87-93;2002)は採血後リンパ球を分離し、試験管内で1.5Gy(1.5Svとほぼ同じ)のガンマー線を照射したところ染色体に異常を生じた数が平均56%になった。そのほかの免疫系試験や血液像の検討でも差がなかった。また細胞遺伝学的検査でも差が認められなかった。
従って、高放射線地域に長年住むとリンパ球が放射線に抵抗性を有することが分かった。もちろんこれが決定的とはまだいえないが、有力な説と思う。

次に抵抗性を有するまでにどれくらいの年月がかかるかについて考察する。
「チェルノブイリ大惨事、人と環境に与える影響」の著者の一人Yablokov博士は放射線への適応能力をつけるにはネズミの研究から20世代はかかると考えた。従って、日本人が高放射能地域に500年も住めば、直接被ばくに対する放射線に強いヒトに変身できるかもしれない。

ところが内部被ばくの場合には、セシウムの場合はラドンのような希ガスの不活性体と違い、カリウムチャンネルという哺乳類に進化する以前からの細胞膜の基本骨格そのものに変更を加えなければならず、差別化することなどほとんど不可能に近い難事に思える。

ついでに書きくわえると、ブラジルのガラバリという海岸沿いの高放射線地域の観光地には、福島原発事故後、観光客がほとんど来なくなり、ホテル経営者は風評被害にあったと騒いでいるそうです。従来放射線をあまり意識しなかった人々が福島原発事故から放射線に関心を持つようになった為、高線量地域に行かなくなったということです。

<引用はご自由に>

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