放射線の生物への影響はDNAを介して起こる−3

  • 2011/10/15(土) 11:54:38

3.障害されたDNAの修復および複製について   
DNA修復作用と免疫作用とは別なメカニズムなのに両者はしばしば混同されて単に免疫という言葉で表現されることが多い。
免疫作用機構は体の中に存在しない外部から侵入してきた病原体などに対し抗体を作ることであり、ノーベル賞を受賞した利根川進教授がが発見したような病原体に合わせて最小限の素材を用いて、病原体に立体的に適合するような抗体を作ることである。

一方、DNA修復はまず壊れたDNAの状態(塩基結合、糖との結合、リン酸結合など)を正しく認識すること。その情報に基づいていくつもある修復機構の中からの最適な手段の選択、最後に工場の品質検査と同じで修復が正しく行われたかのチェック機構と三段階がある精緻を極めたシステムである。

ウイルスはRNA(天然痘ウイルスは例外でDNA)できているが、この最後の段階を欠いているために増殖過程で複製された変異が見逃されるために絶えず変身している。典型的なものはエイズウイルスであり、感染したヒトのウイルスも時がたてば別の型に変異してしまう。ところがDNAでは複製による間違いも少ない上、修復後のチェックも行われる。間違って複製されたらDNAが見つかればその細胞は壊され。DNA修復の間違いの起こる確率は1〜100億回に1回と極めて低い。

修復について、塩基結合がバラバラになっても1本鎖が無傷ならば相手の塩基は決まっているので修復が容易である。
勿論DNAはデオキシリボスという五炭糖やリン酸とも結合しているので、これらの結合が壊れても修復できるようにいくつかの修復機構がある。

次に二本鎖の同位置の塩基が二つ同時に壊れた場合は、難しくなるが、方々にある区切り点ごとに複製して修復する。従って、電気製品が壊れた時、昔は故障した部品1個だけを取り換えていたが、今はパーツごとに取り換えるので一本鎖故障は個別に、二本鎖はパーツごとのようにイメージしてもらえればと思う。
このパーツの作り方の主なものに二種類ある。一つは一般に良く知られている相同組み換え(homologous recombination)で、もう一つは非相同末端再結合(Non-Homologous End-Joining)であり、次の細胞の複製時に起こる修復と同様である。

次に細胞の複製について
細胞の寿命について、一番短いものは2日前後の胃壁や小腸にある上皮細胞で、次いで血小板や赤血球で、皮膚表皮細胞が2-3カ月です。長いものでは脳細胞や心筋は一生涯生き残るものもあります。脳細胞は再生しないと記憶していましたが、再生するとの報告も結構沢山出てきたようですが全部の脳細胞ではないと思います。 細胞の中で心筋細胞は酸素不足や栄養不足に最も強いもので、骨格筋のエネルギーとして使われた後の乳酸までも利用できる。従って心臓のポンプ機能が止まる時も冠血流遮断により壊死した部位以外の心筋細胞は生きています。そのように悪条件にも耐える能力があるためか、心筋の1年間に再生される割合はたった1%位(参考資料1)しかない。

<少し脱線しますが、セシウム137(γとβの両崩壊する)は直接被ばくの時はガンマー線の影響を主に受け、内部被ばくではベータ線被ばくが主になる。内部被ばくで心筋細胞が損傷を受けても再生が余り行われないことから、参考資料1でバスビー教授が語るようにセシウム137のレベルは50ベクレル/kgに長期間、暴露され続ければ、心筋の1%を超えた心筋細胞のプログラム死が起こるならば、この指標というのは発がん問題をはるかに超えるであろう。高線量地域以外の人では内部被ばくだけに注意すれば良いので、ベクレルで管理する方が簡単のように思う。
急死者で心臓に原因があった場合、尿のベクレル値が公表されれば参考になるが、そういう情報が全くない以上、バスビー博士提唱の数値<50ベクレル/kg>に長期間、暴露されれば心臓死に連ながることであり、極めて重大である。>

上記の細胞は、生体内での役割に応じて、それぞれ決まった周期で細胞分裂を繰り返し増殖している。分裂する細胞にとって、特に重大なDNA損傷は、DNA二重ラセンの両方の鎖の切断である。相同組み換えの場合、切断部の修復の際に用いる鋳型としてまったく同一か、よく似た配列をもつゲノムを利用する。この機構は細胞周期において、DNAの複製中か、または複製終了後の間において主に用いられると考えられる。 これは損傷を受けた染色体の修復が、新しく作成された相同な配列を持つしまい姉妹染色分体を利用することで可能になる。

非相同末端再結合とは、損傷により生じた二つの末端をつなぐことである。このプロセスではDNA配列がしばしば失われるため、修復が変異の原因となることがある。 この結合はDNA複製前の、姉妹染色分体を利用した相同組換えが不可能な場合に主に行われる。
DNA損傷などの遺伝子異常が起きると、それを検知して細胞周期を一旦停止させる機構が存在することが発見され、この遺伝子異常を監視し細胞周期を止める機構は細胞周期チェックポイントという。細胞増殖している間、絶えずかなりの被ばくをすることは増殖ストップが頻発することであり、修復および複製機構への影響はそれだけ大きくなる。

一回の分裂増殖の周期を細胞周期というが、呼びこのメカニズムに興味のある方は参考資料2には図で説明されているのでご覧ください。

生殖細胞の場合、卵子のDNAと精子のDNAはそれぞれ減数分裂して半分になっているが減数分裂過程や精子障害については次回述べる。

参考資料
1: http://sorakuma.com/2011/09/12/3675
2: http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/replicat.htm

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