カリウム40被ばくはバナナの摂取量と関係なく常に一定

  • 2012/02/05(日) 23:13:23

タイトルの言葉は生理学を勉強した者なら、誰でも知っている最も基本的な基礎知識である。
しかし、なぜ書くかというと、最近、被ばくを避けるためにバナナを食べないヒトが増えたとの記事を読んだからである。

生物が地球上に誕生した時から30億年以上、この二つの内部被ばく物質(もう一つは放射性炭素14)の影響を受けながら生物は進化を続けた結果,約20万年前に人類が誕生した。
天然に存在するカリウムの0.01%強をK40が占めており、この比率は一定である。

またカリウムは生命の維持に必須であり一定濃度になるように腎臓で調節している。それゆえ、バナナをいくら食べても食べなくても一定濃度が維持されている。この恒常性が維持できなくなった時は死(カリウム濃度が低くても高くなっても心停止に至る)である。従って、バナナを沢山食べようが食べなくても、ヒトは誰でも約67ベクレル/kgのカリウムイオンの被ばくを常に受けている。

腎臓で一定濃度を維持するメカニズムは限外濾過という方法で行われている。すなわち体に必要なものを認識することは容易であるが不要なものを認識するのは大変なので、糸球体で一旦全ての低分子化合物を排出し、必要なものを必要な量だけ再吸収することになる。この機構に異常が起きて高カリウム血漿になれば心電図上でも変化が起こり、数値が著しく上がれば心室細動が起こる。

一方、カリウムの摂取が極端に少なくなるか腎機能障害で低カリウム血漿になると相対的にも細胞外のカリウムイオンは少なくなり、過分極状態となり細胞の興奮(脱分極といい、筋肉の収縮前に必須)が起こりにくくなり、まず不整脈などが起こる。
バナナを食べなくても野菜や多くの食品にカリウムは含まれているので即不足になるわけではないが、逆にいくら食べても体内のカリウム濃度が上がることはないということである。

以下は細かなことになるので、特に興味のある方以外は飛ばしていただいて結構ですが、ついでですので書きます。

細胞内にはカリウムイオンが多量に存在し、一方、細胞外におけるカリウム濃度は低い。このことにより静止時の細胞内の電位は細胞外の電位に対し−60〜−90ミリボルト(mV)が保持されている。

周期律表でカリウムより一段上にあるのがナトリウム(放射性物質の同位対はない)であるので両元素の最外殻軌道の電子はひとつしかないが、細胞の通る通路は別で。ナトリウムチャンネルを通る。細胞内外の存在も逆で、細胞の興奮時の動きもカリウムイオンとは逆である。

次に周期律表で二段下にあるのがセシウムである。セシウムはカリウムより二回りも大きいがセシウムの通るチャンネルは存在しないのでカリウムイオンチャンネルを通過することになる。ただし、原子径が大きいために通りにくくカリウムイオンの15%しか通らない。チャンネルはタンパク質でできているので、セシウムのほうが同じ線量でもより強い損傷を与える可能性もある。
なお、ナトリウムチャンネルはナトリウム原子だけしか通さないのでカリウムイオンや、セシウムイオンは通らない。

細胞膜に存在するカリウムチャンネルも厳密にいうと4種類あり、特に静止膜電位の維持に関与している内向き整流型チャンネルが影響を受けるとAED(自動体外型除細動器)で刺激を与えてももはや心臓は収縮しなくなる。

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