男2000mSv/年まで不妊に影響なし、報道の根拠は?

  • 2012/02/14(火) 19:32:07

2月11日付き東京新聞朝刊4ページに、妊婦と乳児と放射線という記事があった。その中に不妊が心配されるのは一度の被ばくでは数千ミリシーベルト、何年間にもわたる被ばくでは女性で年200ミリシーベルト超、男性は2000ミリシーベルトという記事が書いてあって、最近の知見を無視した、古典的な報告に基づく記事ではないかとびっくりした。

その後特に意見もなかった模様なので書くしだいです。
<そういえば、昨年4月チェルノブイリ原発事故から25周年を記念する学術集会があったが、海外に住む日本人は除き、日本からの参加者は誰もいなかったそうである。一方、アメリカで行われた神経学会には数えたわけではないが3桁近くの日本人が行ったのではなかろうか?>

この記事以外でもほとんどのメディア関係者は、内部被曝と外部被ばくでは被害の大きさが全く違うことを知らない。核種(ガンマー線、アルファー線、ベーター線)が生体内に取り込まれればその核種の種類ごとに分布する臓器が異なるので、ベクレルとシーベルトの計算式は使えない。ベクレルからシーベルトの計算は人間を均質な袋とみなして計算したものであり、DNAもわかっていない時代に、物理学者が不可能なことを無理に単純化して計算しているに過ぎない。その後アルファ線では20倍の係数をかけるとか一部改良が付け加えられたが、最新の生物学の知見が考慮されていないので本質的には変わらない。

このことは国際放射線防護委員会(ICRP)の科学部編集局長(Scientific Secretary)を20年務めたJack Valentin博士が辞任直後の2009年にICRP説では内部被ばくを900倍も過小評価している可能性のあることを認め、同氏はICRPモデルを原発事故に適用することはもはやできないと告白(参考資料1)した。実際にもICRP理論は欧米の被ばく裁判で40連敗を続けていることが、古典的な破綻した理論であることの何よりの証拠である。

内部被曝による影響は、外部被ばくより、はるかに大きいが、まだ研究が進んでないので定量的に示せないことが最大の欠点である。
よって、ここでは外部被ばくに限定して批判する。
外部被ばくに関する影響に関しては宇宙飛行士についての安全性研究が最も進んでいるのでその例から説明する。

宇宙飛行士の被ばく管理は徹底しており、年齢別、性別、臓器別に被ばく量(参考資料2)が管理され、宇宙飛行士になった年齢によって被爆総量が決められている。

27−29歳で宇宙飛行士になったヒトの生涯被ばく線量の上限は男女とも600mSv/引退時まで、である。
 30-34歳では男が800mSvで、女が900mSv
 35-39歳では男が900mSvで、女が1000mSv
40歳以上は男が1100mSvで、女が1200mSvである。
年齢が高くなれば放射線に対する感受性が低くなるので総量は多く設定される。
なお、上述の被爆総量の上限はがん発症の確率が約3%を目安に決められる。
ということは宇宙飛行士になるのは自由意志でなるので、宇宙飛行士になれば生涯で癌になる確率が3%上がることを納得した上で応募したことになる。

宇宙飛行士になるには長い厳しい訓練が必要であり、若くても27歳になってしまうのでそれ以下の年齢における被爆総量を設定する必要がないので、これ以下の年齢での表示はなかった。

算出には理論的根拠があるはずだが、私は知らないので想像すると、もし、10代の宇宙飛行士が誕生したとしたら100mSv台の値が提示されるかもしれない。更に赤ちゃんが宇宙に飛び立つとして、生涯の被ばく線量(生涯ガンになるリスクを3%に設定)を計算すれば何十mSvの値が算出されてしまうように思う。

新聞記事の2番目の問題は被曝年齢による考慮が全くないことである。
メディア関係者は脊髄反射を繰り返すのではなく、たまには自ら考えて、この私の想像に意見をいただきたい。

次に実際の事例からの考察をする。昨年の22日と29日ブログを御覧ください。
母体から赤ちゃんまでの頃については院長の独り言(参考文献4)をお読みください。

チェルノブイリ原発事故処理でかなり被ばくした作業員が、その後結婚して生まれた子供は自身がほとんど被ばくしてないのにもかかわらず、子供の白血病が6-10倍も増加した。即ち、遺伝子障害を受けた精子を介して起こることを意味する。またロシアのDubrova医師はイギリスの科学誌(参考資料3)にチェルノブイリのセシウム汚染地域のヒトに遺伝子突然変異が多くみられることを報告した。

この現象を遺伝子レベル(ミニサテライト)で解明(参考資料5)したのは日本人の中込先生です。

またイギリスのセラフィールド にある使用済核燃料の再処理工場に勤務する人たちの子どもには白血病が多かった。その発症率は父親の吸収線量に相関していた。なお、子どもたち自身は放射線に被ばくを受けなかった。

以上のように放射能被ばくによって父親の優先遺伝子が損傷されると子どもに病気が現れる。しかし、劣性遺伝子が損傷を受けても表面的には何の異常も起きないが、子どもの遺伝子に受け継がれていき、後世代に、劣性遺伝子同士が結婚した時に初めて出現することになる。

このように両親の遺伝子の中で表面に現れるのは優性であり、劣性は現れないが、遺伝子プールの中に温存されて継代されていく。そして、将来劣性遺伝子同士が結婚すればその時に表面に出ることになる。

また一人の人間と別の人間は大体300万箇所(総数は30億個)違いがあるので、個人個人にとっての違いに神経質になることもなかろうかという考えも起きて当然と思う。その考えは被ばく者が少ない場合は何世代にも経る間に集団に埋没されてそのまま消滅してしまい、自然発生率と同様になるかも知れない。

ところが今回のような広範囲な被ばくを受けた場合には、チェルノブイリの事故が参考になるであろう。ベラルーシでは、25年経った現在でも「健康な子どもがわずか2割しかいない」という現実を直視し、向きあう必要があろう。

参考資料
1. http://vimeo.com/15398081
2.http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/gijyutu/004/006/shiryo/04121401/007.pdf
3. Nature:380:683−6,1996
4. http://onodekita.sblo.jp/article/48387629.html
5. http://web.mac.com/nakagome1/iWeb/Site/4440B23E-F002-4547-84F0-F0B0DDD9BECF.html

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