自然放射線と人工放射線の違い(プロローグ)

  • 2012/08/04(土) 14:45:55

地球誕生後の間もないころ強い放射線が降り注ぎ、生物の住める環境ではなかった。しかし、放射線が弱まるととともに放射線の影響を受けにくい海で生物が誕生した。炭素とカリウムは一定の割合 (で放射性物質を含んでいたが、生物はそれらの元素も重要な構成成分に取り入れて進化を続け、約20万年前に人類の誕生に至った。

天然に存在するカリウムの0.01%強を放射性カリウムであるK40が占めており、自然界ではこの比率は一定である。
またカリウムは生命の維持に必須であり一定濃度になるように腎臓で調節している。すなわち腎臓の糸球体で限外濾過により、一旦排泄された後、一定の濃度を維持するために必要な量が再吸収される。この機構があるために、バナナをいくら食べても食べなくても血液中のカリウム濃度は常に一定に維持されている。この恒常性が維持できなくなった時は死(カリウム濃度が低くても高くなっても心停止に至る)である。天然に存在するカリウムの0.01%強をK40が占めており、この比率は一定であるので、この比率を変えることなど徒労である。

同様に炭素は有機化合物の最も主要な元素であり、生物は炭素から成り立つともいえる。炭素の内の0.00000000012%をC14が占め、この比率は一定であるので年代測定にも使われる程各地で均一である。
そのほか天然に存在する放射線にはラドンがあるが、このものは不活性気体であり、空気と一緒に肺に入るので、肺がんの原因物質にはなることが問題になるくらいである。 体の中に吸収されて他の物質と結合することもなく、存在も温泉地など極めて局所的に高いところもあるが多くの場所では問題にならないであろう。

自然放射線について、ベクレル値で表すと60kgのヒトでカリウム40が4000ベクレル/人、炭素14が2500ベクレル/人で合わせて、シーベルト値換算すると年間0.29mSvの被ばくになるが、全ての地球上の生物が30億年間逃れることのできない宿命として背負ってきたものであり、議論の対象にもならないであろう。

67年前の原爆投下により、人類は初めて人工放射線による被ばくを体験した。
原子爆弾は殺傷を目的にしたため、中性子による瞬間的(相対性理論の適用時間は100万分の1秒)な核分裂連鎖反応なので、高熱と爆風と放射線という3点セットで多くの死者を出したが、放射性セシウムの生成はあまりなく、後に福島原発からの放出量は広島原爆の185個分に相当すると報告された。次に放射性セシウムの降下量で比較すると、原爆の場合、上空で爆発し、しかも高温のため、一気に成層圏にあがり、広範囲に拡散した。一部は広島西部に黒い雨として降ったが500ベクレル/平方m程度とごく軽度であった。一方福島では1000万ベクレル/平方mを超える地域もあったので、住民の健康に最も大きい影響を与える、ホールアウト量(放射性物資の降下量)で比較すると1万倍以上違うことになる。

原子爆弾の場合には発生する高速の大量の中性子線によって地面や建物など放射能を持たない物質が放射能を出す(中性子放射化)ようになるので、その影響を加算する必要があるが、残留放射能の消失は早く1年後には1/1000と急減するので、長期的影響はほとんど問題にならない。

それから26年前チェルノブイリ原発で炉心制御ができなくなり、水蒸気爆発が起き、ニューヨークアカデミーによれば100万人の死者が出た。

昨年3月11日の東日本大震災後、福島では4基の原発の水素爆発、プルサーマル原子炉である3号機では、部分的核分裂反応が起き格納容器も爆発した。そのほかペントによる放射性物質の排出もあった。3月18日には早くもアメリカ西海岸各地でプルトニウムよびストロンチウムなど過去20年間における最大値が観測された。
被害が今後どうなるかは人々が如何に多くの人工放射線の被ばく作用を理解し、的確に対処できるかに、かかっていると思う。また低線量被ばく作用に関する新知見は次々と報告されてきているので、その知見を積極的に活用することも被害を最小に食い止めるには重要である。
ストレス説に偏った精神論によって被ばくが軽減できるとする、考えほど愚かな行為はないであろう。

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