自然界の放射性物質と人工放射性物質の違い(1)

  • 2012/08/08(水) 23:03:00

自然放射線と人工放射線の違いというタイトルでプロローグを書いたのは、良く使われる言葉なので安易に使ってしまった。しかし、良く考えると、漠然としており、自然界に存在する放射性物質にはどんなものがあり、原発事故(通常運転時放出でなく核分裂まで含む)により放出された放射性物質と個別に比較検討しなければ結論を出せないのではと気付いた。それで自然界に存在する放射性物質の由来と原発事故(この場合、広義に考えて原爆や再処理工場まで考えた)から放出された放射性物質について調査し、塾考を重ねた結果は自然界と人工放射性物質の間で相違のあるものもあり、相違のないものもあるという考えにいたった。相違があるという考えについてはチェルノブイリデータを活用し、未検討の分野には、仮説も加えながら書き進めたいと思っている。

自然界の主な放射性物質にはカリウム40、炭素14そして不活性気体であるラドンの3種がある。これらの自然放射性物質の人体内でどれくらいあるかをベクレル値で表示すると60kgのヒトでカリウム40が4000ベクレル/人、炭素14が2500ベクレル/人である。シーベルト値に換算する両者で年間0.29mSvの被ばくになる。ラドンは温泉地などでは高いがそのほかの地域では低く平均化が難しいが、日本の平均で0.4mSvとの報告が多い。他に放射性物質でないが宇宙線などを加えると、日本人の平均被ばく量は年間1mSvといわれている。

●炭素14は自然界と人工に関係なく生物的影響は同じである。
理由は単純で、炭素14は自然界に存在するが人工放射能と同じ原理で生成するからです。炭素は宇宙から飛んでくる高速の陽子が大気圏で核衝突を起こすことにより、中性子が放出され、これが窒素原子核と衝突し、炭素14が生成する。従って、地球上の炭素14の濃度は太陽活動の影響を受ける。
自然界において生成される炭素14も最終過程は高速の中性子の核への衝突である。従って、高速の中性子を人工的に作り出せるなら、自然界で起こる現象であろうと人工的な手段であろうと変わらないことになる。
高速中性子は原子爆弾や水素爆弾、東海村の事故あるいは六ケ所村の再処理工場などで発生し、窒素原子核と衝突することにより、炭素14が生成した。

●自然界のラドンと原発事故で放出されるキセノンはともに最外殻電子がすべて飽和されているので、化学的に他の元素と反応する(不活性)ことはなく。肺から吸入しても、ほとんどが呼気に排出される。
崩壊にさいして、放出する放射線についてはラドンがα線を主にβ線も出すのに対し、キセノンはβ線のみである。
生物の影響では両者ともに肺がんが特に問題になっている。ラドンはタバコに次ぐ肺がん物質であり、米国環境保護局(EPA)は、アメリカでの肺がん死が毎年21000人と推計している。このようにラドンは温泉地などで多くあり、また重い気体なので地下室などに溜まり易く、ヒトが吸入し易いこともあろう。

今回の福島原発事故ではキセノン133は1100京ベクレルという天文学的量が排出されたが、半減期は5日なので、現在は消失している。
ただし、キセノンは空気より若干軽い気体なのでラドンのように低い所に集まりやすいこともなく、原発事故で高温に熱せられた時は上昇し、希釈される易いと考えられる。
ただし、スリーマイル島原発事故ではキセノンにより肺がんが1割増え、チェルノブイリ事故後肺がんが58%(キセノンを含む全核種の合算効果)増加しているという報告もあるので軽視すべきではない。
従って、肺がん患者の症例が出た場合にはキセノンとの関連性もチェックすべきと思う。

以上核種も違い、崩壊時発生する放射線も異なるが、不活性気体という共通の性質により、生物的影響(主に肺がん誘発作用)はほぼ同じであろうと考えられる。

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