原発から飛散した放射性セシウム粒子の径と組成

  • 2012/12/01(土) 23:45:54

一昨日、放射性物質が運搬される担体や粒子径が分からないと書きましたが気になって調べましたら参考資料が見つかりましたので訂正し、放射性粒子の径と組成という項目を作りました。原発事故という突発的なできごとの後に行われる基礎的な検討であるために、最も必要な爆発事故後のデータ収集などほとんどされたことがなく、また実験で同じ事象を再現できるものではないことから、今後期待できるのは産総研が昨年11月までに捕集した放射性粒子の解析結果によるデータ追加くらいの様な気がする。
瓦礫焼却による放射性粒子の解析は、焼却をやめれば不要になることであり、そのための基礎データの収集研究費は、もっと建設的ことに使うべきだ。

●京大による予備試験
今年1月、小泉昭夫先生をトップとする京大チームが福島県成人住民の放射性セシウムへの経口、吸入被ばくの予備的評価というタイトルで下記URLに発表しました。
http://hes.med.kyoto-u.ac.jp/fukushima/EHPM2011.html
ここでは吸入被ばくに関するポイントのみを書きます。
<方法>福島市内に設置したアンダーセン式大気捕集装置を用いて、空気力学的直径の異なる大気粉じんをそれぞれ捕集した。調査期間2011年7月2-8日。
<結果>粒子径も0.46-3.3μm<実際はこの部分を4つに分けていた>の比率が最も高かった。従って、肺胞内に入り込む量もこの粒子径のものが最も多かった。
<私の感想>
この時期は爆発後4ケ月後にもなるので、彼らも推定しているように一旦沈着したものが再浮遊した可能性もある。京都から実験準備をして実施となると期間が遅れるのは止むを得ないような気もするが、原子力事故当時とはかなり違う可能性が高いと思う。

●産業技術総合研究所による粒子径および担体の解析
今回福島第一原発から160km強離れた場所にある産業技術総合研究所の環境管理技術研究部門、大気環境評価研究グループの兼保直樹主任研究員らが中心になって2011年4月28日より大気エアロゾルをサイズ別に分級して捕集し、放射性セシウム134Csや137Csを含む粒子の粒径分布と大気エアロゾルの主要成分の粒径分布を測定し、その報告書はEnvironmental Science and Technology 46(11), 5720-5726 (2012)に掲載された。
また邦文による概要は産業技術総合研究所内の下記URLで見ることができる。
http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/nr20120731/nr20120731.html#c
上記英文と邦文を読まれれば全容がお分かりになれますが引用箇所を「」内でくくり示します。 
「2011年4月28日より茨城県つくば市にある産総研つくばセンターにおいて、エアロゾルを13段階の粒径に分級し吸引捕集した。2011年4月28日〜5月12日に捕集した大気エアロゾルに含まれる137Csや134Csの放射線量を測定し、これらの粒子の粒径分布を測定した。」
⇒放射性物質捕集時期は事故後1カ月半後になるが、突発的事故後だけに随分努力されたようにも思える。昨年11月までの放射性粒子の捕集を続けた試料が残っているので、今後分析予定とのことで、4月から11月までの期間における違いがあるかなど、今後の分析結果に期待できそうである。

*137Csを含む粒子と134Csを含む粒子の粒径分布はほぼ同じで、大部分が空気動力学径(以下「粒径」という)2μm以下の微小粒子領域に存在し、0.2-0.3 μmと0.5-0.7 μmに極大値を持つ二峰性の特徴的な分布を示した(図1A)⇒この図はURLのをクリックすると見れます。

*担体については放射性セシウムは、硫酸塩エアロゾルに含まれた状態で大気中を輸送された可能性が高いが結論だった。

*本研究成果は放射性物質の拡散・沈着モデルの改善に資することで、実態解明の進展に期待されるとのことだった。

長野県は落ち葉の野外焼却の自粛を市町村に通知

  • 2012/12/01(土) 12:07:36

現在大阪市は放射性物質を含み、アスベストについては正確な調査結果が出ていない危険性のある瓦礫の試験焼却を始めた。
一方、関西の隣の中部地方にある長野県では落ち葉の野外焼却の自粛を市町村に通知した。

少し古い記事で気がひけますが知ったばかりなので紹介します。
信濃毎日新聞2011年11月15日によれば、見出し言葉が県「たき火・焼き芋自粛を」 落ち葉のセシウム沈着を懸念
「県は14日、文部科学省の航空機による放射線量モニタリング調査で佐久地方の群馬県境付近で放射性セシウムの沈着量が比較的高かったことを受け、落ち葉でたき火をしたり焼き芋をしたりすることを自粛するよう県民に伝えることを、県内全市町村に要請した。落ち葉は放射性物質が蓄積しやすく、汚染されていた場合、燃やせば灰のセシウム濃度が高くなる上、大気中に広がることも懸念されているためだ。
文科省が11日公表したモニタリング調査では、佐久地方で局所的に地表面へのセシウム沈着量が比較的高かった。一部地域では落ち葉の放射能は高いとみられるが、県は「それ以外の地域の落ち葉が大丈夫とも言えない」(県廃棄物対策課)として、自粛地域は限定せずに広く注意を呼び掛けることにした。
 今回の要請に当たって県は、落ち葉を使っての焼き芋などでセシウムが濃縮された焼却灰が口に入る可能性がある―と懸念。一般廃棄物として市町村などの焼却施設で処分するよう促している。果樹などの剪定(せんてい)枝についても「市町村の焼却施設に出すのが好ましい」との見解を示した。住民への周知の方法は各市町村に委ねる。環境省によると、フィルターが付いた焼却炉では、焼却灰に含まれる放射性セシウムの大気中への飛散量を99・99%以上除去できるという。
 県ではこれまで落ち葉の放射能を調べてはいないが、北佐久郡軽井沢町が町内5カ所で今秋測定した落ち葉の放射能は、セシウム134が最大で1キロ当たり1400ベクレル、セシウム137が同1800ベクレル測定されている。
 放射能測定や除染について情報共有するため、県が県内自治体担当者らを対象に県松本合同庁舎で14日に開いた連絡会議で通知した。」

ところがこの記事に基本的におかしなところが二つあった。
「環境省によると、フィルターが付いた焼却炉では、焼却灰に含まれる放射性セシウムの大気中への飛散量を99・99%以上除去できるという。」

⇒この文章は科学的見地から納得できない。
化学物質は分子結合であるために何千度の高温で焼却すれば分解されて無害になる。従って、化学物質ならばダイオキシンであろうとなんでも大気中への飛散量を99・99%以上除去できると表現は正しい。

一方、放射線は原子核内の反応なのでこれを制御できるのは、高速中性子の照射とか太陽のような高温しかなく、焼却炉内では何もできない。
結局放射能を取り除くためにフィルターを考えるかもしれないが、セシウムならば気化温度が671℃と低いので焼却により容易に気化する。気化すれば1モル分子に含まれるセシウム原子の数は天文学的な値(6X10^23)であり、これを取り除けるフィルターは原理的に存在しえない。

ただし、簡単な方法がある。それは原子力発電所でウエットベントと呼ばれる方法(水槽のなかを通すことである)である。しかし、福島第一発電所にもこの設備はなく放射性物質はドライベントで放出された。このウエットベント設備を備えた日本の原子力発電所はないと記憶しているが、原子力発電事故よりはるかに線量が低いので作れないことはないであろうが高価であろうし、各地に作るべきものではない。

2番目におかしな点は行政上の問題である。即ち環境省管轄下にありながら、関西とその隣の中部地方において、市民に対しては瓦礫焼却を禁止しながら、地方自治体に対しては多額の税金を使いながら瓦礫焼却勧めている矛盾である。環境大臣は矛盾に応える義務があると思う。

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