昨晩のNHKスペシャル放送でのおかしな点について

  • 2013/01/13(日) 13:36:06

昨年4月ころ、NHKETV特集で空白の放射性ヨウ素についての報道があり、その時は非常に新鮮な気持ちで見た。今回はその続きになると思った。しかし、其の後編でなく、それを含めての総集編となっていた。タイトルにおかしな点と書いたが、放送局の原発報道は原子力村の強い影響下にあるためか、偏った観点からの報道がほとんどなので、そういう意味では上出来と言えた。

ヒトが吸気として吸うという観点に立てば、地面を這うように放射性ヨウ素が拡散していく三次元映像が本放送のハイライトと思った。この映像が完成したのも、手弁当でご尽力された次の先生方(岡野、鶴田、滝川、田辺、佐藤)によるものと深謝します。この図から放射性物質は風向きや風の幅によってあらゆる方向へ向かい、ある場合には細長くあまり希釈せず200-300mkmも飛んで行くものであるという強い印象を受けました。

NHKでも外局で作られたETVと違って、具体的論での言及を避けなければならない制約がかかっていたと思う。そこを、鎌田キャスターが誰も文句をつけることのできない一般論でうまく言及していたと思う。

次におかしな点について、床次教授を非難する気はないのですが、むしろ浪江町民からのたってのお願いで苦肉の策で考えられたとおもい同情します。しかし番組でこのことが、何故か一人歩きして、他の町村からも依頼がきているというナレーションがあったのでびっくりして、書く次第です。

セシウム134の半減期は2年ですが、生物的半減期は短いわけです。生物的半減期は下段グラフ(参考資料1)から目算すると、成人約80日、5歳児約20日、1歳児約11日となり、若くなるに従い早く排泄されます。即ち、放射性セシウムは物理的半減期でなく、生物半減期が律速段階になっていることが分かります。

浪江町でのWBCによる測定が2,3月遅れならまだしも、1年経ってからでは子供にあったセシウムはほとんど排泄された後で測定されていることになります。浪江町の子供全員からWBCの陽性はたった一人しかいなかったこともこの裏付けになります。なお、何故この子が陽性になったかは放射性セシウムが体外へ排泄された後に、食品とか吸気などにより、再び体内に取り込んだからと考えられます。

原発近くの浪江町の成人町民でも1年後のWBCの測定ではほとんどの住民が未検出{註:日本ではWBCの測定台数が少なく希望者は多いので、一人2,3分しか時間をかけていない。海外では一人当たり30分かけて測定しており、50ベクレルの単位まで測定している。従っておおよそ、日本の検出力は1/10しかない}であり、子供ではたった一人でしか検出されなかった。
従って、これから他の市町村がはじめれば、2年後となりWBCの数値から、事故直後の放射性ヨウ素の推定は難しいであろう。

⇒先ほど書いたばかりでしたが、ヨウ素131の量を、何年後であろうと類推する良い方法を思い出しましたので追加します。
この方法は、体内へ取り込んだ量でなく、環境中に放出された濃度です。ヨウ素131は短命なので長寿命のヨウ素129と比較すれば可能になります。
放送中にもヨウ素とセシウムの気化温度<ヨウ素が184℃(115℃は融点)115℃なのに対し、セシウムは671℃>での違いから、放出される時間が変わり、風の方向も変わり分布が変わる話がありました。化合物の移動の類似性からも同じ元素が望ましいわけです。また同じ原子炉からどちらも多量に放出されていることが望ましいわけです。この条件を満たすものがヨウ素129でした。三宅らは原発事故からあまり時間が経たないうちに、原発から4−59kmの同心上にある50箇所の地表面に存在するヨウ素129とヨウ素131の両者を測定し、ヨウ素131が消失しても残った129から類推可能なことを見つけ、欧文誌にも掲載(参考資料2)されました。

チェルノブイリ事故時と違って測定機器の進歩に伴い加速器質量分析計AMS(accelator mass spectrometry)により超微量分析が容易にできるようになりました。
原子炉から放出されたヨウ素129の量(原子数)は131の量より10数倍にもなる大量でしたが、半減期が16百万年と長いために1秒当たりの壊変数は0.0002%にしかなりません。

従って、三宅らの方法により地域によってはヨウ素131の地表面への降下量の推定ができるので原発から60km以内の地域ならば推定できる可能性は高い。
しかし、放射線障害は個人差が非常に大きいので、線量だけで規定されるものではない。今後、甲状腺検査を定期的にしっかり受けていくことが大切だと思う。

それから聴き違いかも知れないが9ケ月まえの報道では大人での放射性ヨウ素の線量を3/11まで逆算し、甲状腺等価線量を計算したら670mSv?くらいだった記憶があるが、今回の63mSvでは単に逆算日数の違いでは合わず、甲状腺等価線量に換算することをしなかったのかとも不思議な気がした。

参考資料
1. http://www.nirs.go.jp/db/anzendb/RPD/JPDF/gy/jgyCs137WB.pdf
2.三宅らによる海外雑誌投稿文(ヨウ素129からヨウ素131の量を推定する方法)Geochemical Journal, Vol. 46, pp. 327 to 333, 2012
Isotopic ratio of radioactive iodine (129I/131I) released from
Fukushima Daiichi NPP accident
YASUTO MIYAKE,1* et al,
http://www.terrapub.co.jp/journals/GJ/pdf/4604/46040327.pdf

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