内部および外部被ばくによる甲状腺癌の小児と成人の違い

  • 2013/02/25(月) 19:38:23

甲状腺癌は小児と成人では発症数が著しく異なるだけでなく、違いもあるので2011年発表されたレビューを中心(参考文献1)に福島原発事故との関連性がありそうなところを纏めた。

過去60年間における小児甲状腺癌の最初のピークは1950年代に起きた。
このケースは慢性扁桃腺炎や胸腺の過形成の治療などに当時レントゲン照射が盛んに行われたことからもたらされた。
この場合は放射性物質による外部被ばくによる影響と同じとみなせよう。
照射から発病までの潜伏期間は10−20年であった。
<註:現在は放射線遮蔽技術向上や甲状腺被ばくをさけているのでこのようなことはほとんど起こらないであろう。> 

なお、外部照射による甲状腺がんの発症については1982年Lee W.らが3000匹ものラットを使って、ヨウ素131の腹腔内投与と甲状腺へのX線の照射実験を行い、同じ放射線量ではむしろ外部被ばくの影響が大きい結果(参考文献2)が確認された。<註:種差があるので厳密な比較などできないが、初期外部被ばくの影響が意外に大きい可能性もあるかと思い引用した。>

次に起きたのはチェルノブイリ原発事故後によるもので、事故後4,5年後から認められ、ピークは1990年中ごろであった。

小児甲状腺がんと成人甲状腺癌の相違について次のように記述されている。
●見つかった甲状腺癌は子供(0-20歳未満)が成人(20歳以上-50)より大きいので、次に示すように、4cm以上の大きさは子供に多く、1cm以下の小さながんの比率は成人が多い。
                          
甲状腺がんの大きさ 4cm以上   子供30%、 成人15%
             1cm以下   子供 9%、 成人22%

<註:当時は甲状腺がんの発症を考えてなかったので初期の計測がなかった。従って、医学的な考察以前の問題と考える。また子供のがんの増殖速度は非常に速いことも示唆される。これら二つの理由で甲状腺がんの大きいのは子供という風な逆転現象が起きた。
何故こどものがんの増殖速度が早いかの根拠は大坂大学の高野医師による胎児性細胞から直接発生するという新しい発癌モデル(芽細胞発癌説)により説明できる。>

●子供の甲状腺癌はしばしば複数できる(multicentricity)ので手術の際は見逃しのないよう注意すべき。<福島でも結節がいくつも見つかった例を聞いたことがある>

●子供の甲状腺癌は頸部リンパ節転移を起こし易いが、遠位転移を起こすこともあるので、手術のタイミングが重要。

参考文献
1.Journal of Tyroid Research, Vol 2011, Article ID845362, F. Vaisman et al
http://www.hindawi.com/journals/jtr/2011/845362/
2.Thyroid Tumors following 131I or localized X irradiation to the thyroid and pituitary glands in rats, Lee W. et al: Radat. Res. 92, 307-309 (1982)

ベント前、既に700倍の放射性物質が10キロ圏に拡散

  • 2013/02/23(土) 20:35:28

三春町は独自の判断でヨウ素剤を服用していたので甲状腺がん発症抑制効果に私は注目していた。

⇒国会事故調報告書を読むとすぐ眠くなってしまい駄目でしたが、幸い大沼安史ブログ(リンク上段より7番目)を読み、ありがたいことにいろいろ貴重な情報があり、それも参考にしていろいろ修正しましたので、昨日のものは削除します(2/23記)。

昨日の毎日新聞(同社のスクープだそうです)によれば
「東日本大震災による東京電力福島第1原発事故で、11年3月12日に1号機格納容器の水蒸気を外部に放出する「ベント」を始める約5時間前の午前5時から、放射性物質が約10キロ圏に拡散していたことがわかった。福島県の放射線モニタリングポストに蓄積されていた観測データの解析で判明した。放射線量が通常の700倍超に達していた地点もあり、避難前の住民が高線量にさらされていた実態が初めて裏づけられた。」

また大沼安史ブログによれば
「1号機 ベント「開始」の5時間前から 10キロ圏に放射性物質が拡散! 3・12午前5時段階で 北2・5キロの双葉町郡山地区 早くも0.48マイクロシーベルに(通常0.04〜0.05マイクロシーベルト) 5・5キロ離れた双葉町山田地区 ベント「直前」の同10時に32.47マイクロシーベルトと通常の約720倍を記録! 避難前の住民が高線量にさらされていた実態が初めて裏づけられた! / 福島県のモニタリングポストが記録! 国会事故調も知らされず!」 
県原子力安全対策課の担当者は毎日新聞の取材に対し、「県内全域の放射線調査などの他業務に忙殺され、結果的にデータ解析が後回しになった。大変申し訳なく、ただ謝るしかないと」と謝罪した。

事故から2年になろうとしているこの時期での発表は、小児甲状腺がんの発症がチェルノブイリをはるかに凌駕する事態に進展しつつあることが原因かもしれないが、国会事故調も、福島県民健康調査室も知らない新知見が発掘されたのはジャーナリズムが機能することが如何に重要かを物語る。

原子力規制委員会は低線量地域の子供という枕詞を使って、甲状腺エコー検査を中止しようとしているとの報道があったが、見方によれば、まさしく闇に葬ろうとする行為であろう。
何故ならヨウ素分布が高いと想定される地域のエコー検査は2013年度(2013.4-2014.3)から始まることになっている。従って2013年度の発症数は想像を絶する可能性もあろう。
福島県の新潟や山形寄りの地域では確かに低い地域もあるが、そういうところを含め、関東は全ての県、宮城や岩手県まで範囲を広げて小児甲状腺エコー検査をすべきだと私は書いてきた。

確かに病理検査をしなければ癌と認定されることない。もし、がん化したならば通常の固形がんは年間約30倍で増殖することから、其の速度(あらゆる癌の中で甲状腺がんが最も幅が広いので平均値でみるしかない)で増殖すれば1,2年後には首部の腫れは誰もがわかるようになるが、そういう風になる頃は甲状腺ホルモンの異常による病状の進展や転移も起こるであろう。しかし、検視がなければ何のエビデンスも集まらず闇の中に放置される。
チェルノブイリでは肺転移などで亡くなった子供もかなり出たことが報告されているので少なくとも病理的検査は行われていた。そういう事例を知りながら、再びチェルノブイリの後追いなどあってはならないことである。そのように子供を放置(甲状腺異常者の検査間隔一律2年に関わらず、保護者は異常に気付いたら検査をさせるべきである)するなど絶対に許されないことである。

規制委員会委員は恐らく原子炉の専門家であり甲状腺被ばくに口出しすべきではないと思う。委員のすべきことはヨウ素131の立体的な分布表を作成して、検査対象者の発掘の方向の仕事をすべきだ。ヨウ素131の半減期は8日であるが、今からでも調べることは可能である。というのは福島原発事故から間もない時期にヨウ素131と半減期1600万年のヨウ素129を同時に測定した研究者がおり、その比は1対30である論文が公表されているので、作れるのでこういう前向きな仕事をすべきである。

今回の発掘資料は事故初期の実測値であり、配管損傷による放射能漏れというのは福島第一原発事故究明においても極めて重大な問題であり、国会事故調が把握できていなかったことは大問題であろう。当然、国会事故調の報告書そのものが後世のヒトによって検証され、評価されるだろう。県民健康調査室が被ばく調査に用いたデータはSPEEDIによる予測値であり、本データのような実測値の価値は大きいが測定箇所はほんのわずかであり、正確な被ばく量推定は極めて困難な作業と思う。

私はベントによる被害というのは前例がないだけに数値が低く出される懸念をもっていたが、配管漏れでベント5時間前に通常の700倍の放射性物質が出ていたなど想像もできなかった。こんなことが起きてはもはや誰も放射性物質から逃れる有効な方策など打ちだせないと思う。避難規準にも地震の大きさの視点を入れるべきと思うし、こういう問題の審議こそが規制委員会の仕事であろう。

⇒ラットの甲状腺腫瘍実験で、放射性ヨウ素と甲状腺にX線照射するという実験データについては原文を取り寄せて良く読んでから書くようにします。

ヨウ素剤を服用した三春町の子供も甲状腺二次検査へ

  • 2013/02/21(木) 09:16:52

2012年度実施分として、1月21日時点で9万4975人の一次検査が終え、549名が二次検査へと進んだが、その後郡山市、三春町に検査が進み、2月18日時点で更に200人が二次検査へ回ることになった(参考資料1、元資料はおしどりマコさん)。
三春町は国や県からの要請もないのに町独自の判断でヨウ素剤の服用を決定したので、その効果が期待されていた。それにもかかわらず二次検査へ進む子供たちが出た。

安定ヨウ素剤(ヨウ化カリウム、pottasium iodide)は理論的に被ばく前に服用することが必要であり、服用のタイミングが遅れた可能性もあるかも知れないが、詳しい事実関係がわからないので現時点でのコメントは暫定的なものになってしまうが。

今回のような水素爆発により事故を知るようでは遅すぎるといえよう。というのはヨウ素の沸点は184℃と低くく、セシウム(674℃)より早い時期に放出されることから、セシウム規準の判断では遅すぎてしまう。
実際今回も水素爆発前にも配管漏れによる高濃度の放出があったことが随分後になってわかった。
今後、三春町でのヨウ素131のプルームの分布状況や服用した時期との時間差などに関する正確な情報がえられることによって真実が明らかになろう。いずれにしても安定ヨウ素剤の服用タイミングは非常に難しいことが示唆された。

タイミング重視という視点に立てば、各家庭に配布しておかなければ間に合わないだろうし、服用規準を小児では10mSv規準レベルまで大幅に下げるとか、服用の指示をするのに、日本独特の会議システムではヒトを集めるだけで時間ががかかり遅れてしまうだろう。結局、各市町村長にまかせるしかないようにも思える。
原発を再稼働するならばその前に徹底的につめておくべき事項であろう。

参考資料1、Fukushima Diary
http://fukushima-diary.com/2013/02/additional-200-children-to-have-re-examination-of-thyroid-in-fukushima/
<1時間16分頃まで早送りして聞いてください。おしどりマコさんの話が聞けます>

甲状腺エコー検査をスピードアップし、かつ対象地域の拡大を

  • 2013/02/18(月) 23:39:29

福島の初年度検査で対象者の36万人の1割強の人数のエコー検査により約9人の甲状腺がんが認められる確率が最も高いことは前回のブログで書いた。

その後メディア報道に注意してみていたが、3人の癌が見つかったが、放射線の影響でなく元々あったヒトに見つかったという表現であり、7人は癌の疑いもあるがということで、そうでない可能性も高いとの誤解を与えかねない表現であった。
いずれにしても、メディアは事態を非常に軽く見ていることが分かる。NHKは報道すらしなかったそうだが、深刻な事態との認識があったからしなかったとしたら罪深いことであろう。

そういうわけなので、再度詳しく書く。事故の起きた初年度(2012年3月末まで)福島の子供36万人の1割強3万8千人の甲状腺エコー検査を実施した結果、二次検査対象が186名出て、その中から穿刺細胞診まで実施したものが76名。その結果10名が癌の可能性が極めて高いと判定(この判定を誰が行ったかの言及はなかったが手術を前提にしている以上、臨床検査技師でなく病理学の専門家が診たであろうから、確率80%と表現されても、実際はもっと確率が高いものであろうと思う。 既に3名の手術が実施され組織標本における病理学的診断から3例ともに癌が確定した。残りの7名についても、手術が行われた後で、組織標本検査で最終決定が下されるであろうが9名の線が最も高いと思う。

第2年度(2013年末まで)は現在進行中であり、詳しい報告がなかったので詳細はわからないが、今まで判明しただけで二次検査該当者が549名出ている。従って、初年度と同じ率で癌になるとすると前回ブログに書いたように27名となる。さらに現在一次検査が進行中でありどれくらいプラスされるかわからないが、仮に後186人二次検査に進むヒトが出たとすれば9人となる。それに初年度の9人を足すと総計で45名となる。この場合の試算では初年度と2年度の差を見てないが2年度がわかれば3年度の類推も可能になる。

このようなスピードでかってない癌が進行していることは当初の4年間で終えればよいという楽観的な見方の修正を示唆する。一刻も早く一次スクリーニングを終わらせるようにすべきである。このスピードで進行するならば2年に1回の検査間隔では遅すぎ、福島の子供の甲状腺エコー検査は最長でも半年間隔ですべきであろう。

放射性ヨウ素はセシウムとは異なった分布をしているので、地域の設定は難しいが、かなり広範囲に広げる必要があると思う。
腫瘍の大きさの平均が1.5cmというのは子供の甲状腺にとってはかなり大きいような気もするし、転移も心配だが。もっともこのような細かなことは臨床家におまかせするよりないが。

新しい事態に対応して修正して対処するのでなければ、太平洋戦争の時のように同じパターンでの敗北を繰り返し、自爆することになろうが、犠牲になるのは子供だけに大人が絶対にしてはいけない行為である。

松崎道幸内科医も福島のこどもの甲状腺がんにおきた癌化を深刻に考えられており別紙(参考資料1)のように解説されております。

またオーストラリアのカルディコット小児科医は福島の子供の甲状腺異常の出現が非常に速いことと其の異常率が高いことから福島の子供の被ばく量がチェルノブイリより多いことを示唆すると昨年の来日の折に話されました。
メディアと違って、専門家は今回の事態を重く受け止めておられるようである。

福島原発事故による初年度の甲状腺がんエコー検査スクリーニングにより、未曽有の甲状腺がんの発生が伺われる事態になった。この原因は必ずある筈である。放射性ヨウ素には実に多くの同位体があり、例えば今回の福島の原発事故でもヨウ素131より、約30倍多く放出されたヨウ素129や、また大量に放出されたと一旦報告されたが精度が低いということで取り消されたヨウ素135などもあるし、その他も含め、チェルノブイリとの違いについて、私の能力では限界があることは知っているが、もしチェルノブイリとの違いが生じるならば、必ずその原因がある筈であるということと、原因がわからずして適切な対策が実施できるわけがないという考え、更には子供への思いがその原動力であり、精一杯努力したい。

参考資料1.
https://docs.google.com/viewera=v&pid=gmail&attid=0.1&thid=13cdcc0e2618d7f2&mt=application/vnd.openxmlformatsofficedocument.presentationml.presentation&url=https://mail.google.com/mail/ca/u/0/?ui%3D2%26ik%3D5e3c10bd33%26view%3Datt%26th%3D13cdcc0e2618d7f2%26attid%3D0.1%26disp%3Dsafe%26zw&sig=AHIEtbT1QpnF6xwnYhJVgD2c08hYiXCMiQ

被ばく初年度で3.8万人の小児甲状腺がんエコー検査から9名発症

  • 2013/02/14(木) 16:58:34

タイトルの9名という数値は、慎重の上に、慎重を重ねた結果、遅れぎみに出てくる福島県民健康調査室からの提供数字に基ずいた、最も確度の高い数値である。従って、数値がこれ以上に変わることはあっても、以下になることはありえないと思える。一方、小児甲状腺がんは100万人に一人の発症と言われていることから、200倍の高率であり、ヨウ素被ばくによる影響と考えるのが自然であろう。
ところが、このような状況下でも福島県の検討委はチェルノブイリでは4,5年後に初めて甲状腺がんが見つかったので、原発事故由来ではないとの見解を示している。

昨日第10回福島県民健康管理調査検討委員会が開催され、この会におしどりまこさんが出席され、資料(参考資料1)を纏められたのでそれを中心に、過去に入手した情報も入れてまとめた。

原発周辺13市町村の3万8114人の子供(被ばく時年齢0-18歳)について2011年度分の甲状腺エコー検査が昨年3月末までに実施された。なお、その結果、B判定となり、二次検査の対象になったものが186名いた。このうちに実際に二次検査をしたものが162名、(再検査11名、二次検査終了151名)その中で、細胞診まで実施したものが76名。
66名は良性と診断されたが、10名が悪性もしくは悪性の疑いとのことであった。この10名は、男子が3名、女子が7名で、平均年齢は15歳、甲状腺腫瘍のサイズの平均は15mm であった。なお、おしどりまこさんは10人のうちの何名かを個人的に知っているが、地域的な偏りはなく、線量の低いところではなく、線量の高いところで、原発事故以降、避難をせずに生活をしていたご家族であったとのことでした。

10名の内3人は腫瘍の摘出手術を完了し、組織標本の病理学的診断により悪性腫瘍であることが最終的に確定した。
残りの7人は細胞診検査により約8割の確率で甲状腺がんの可能性があるという。7人の確定診断は今後の手術後などになるため、最終的な癌の発症人数を推定すると、3+7X0.8≒9人になる可能性が最も高い。

2012年度の小児甲状腺エコー検査は進行中であり、今まで二次検査の対象になったものは549名であったが、こちらの検査も、まだ進行中で結果はとりまとめていないとのことであった。
2年度目の549名中からも、初年度と同率で起こると仮定すると549X9/186≒27名の発症が推定される。

なお、昨年11月18日で開かれ県民健康検査で16〜18歳(住所は明らかにされていず、年齢は幅で示された)の女性で、甲状腺検査の1次検査で、1人が初めて、がんの疑いがあり「直ちに2 次検査が必要」と判定された例が1例報告された。しかし、その後の報告が今回もなかった。しかし、昨年4月以降のケースなので2012年度分として、纏めて報告されるように想像する。

以上は福島県健康調査室による報道であるが、福島以外での甲状腺がんの報道も散発的に聞く(参考資料2に書いた東京多摩地区の7歳児の甲状腺がん発症)ことから、ヨウ素131の高濃度分布地域を(参考資料3.特に地表10m以下で分布)特定し、甲状腺のエコー検査の必要性など検討すべきと思う。

参考資料
1.おしどりまこさん、http://news-log.jp/archives/6659
2.2013.1.9の当ブログ
3.2013.1.2放送のNHKスペシヤル、「空白の初期被ばく」

HOME |