岩手県沿岸部で今年度は昨年度より脳卒中患者が5倍に急増中

  • 2013/04/06(土) 09:44:25

岩手県沿岸部に位置し、震災による津波で大きな被害を受けた山田町、大槌町、陸前高田市の病院や診療所に対して行われた聞き取り調査を岩手医大が実施した結果、脳卒中患者が急増していることが判明した(参考資料1)。
これを詳しくみると、震災直後の2011年4月〜2012年3月までの1年間では、同地域の脳卒中患者は11人と月平均0.9人にとどまった。ところがその後の2012年〜2013年1月までを見ると患者数は52人、月平均5.2人にはね上がった。即ち5倍以上に増加した。これから明らかに言えることは震災直後より、現在の方が被災者の健康状態は悪化しているという意外な結果だった。
これを受け日本脳卒中学会は脳卒中予防体制の整備と被災地の環境改善をするように国に要望書を提出した。
復興が進まないことに寄るストレスや、良好とはいえない住環境などが脳卒中患者を増やしている、というのが日本脳卒中学会の見解だった。

しかし、同じ住環境に住みながら1年の間に5倍の増加は不自然であろう。
放射線の影響が深刻化してきた方がまだ合理性があろうと思ったら、英国の医学誌「BMJ Open」に掲載された論文(参考資料2)「広島・長崎の原爆被爆者の致死的・非致死的脳卒中と放射線被曝の関連についての前向き追跡研究(1980–2003)」によると、広島・長崎の被ばく者では、被ばく線量と脳卒中のリスクに関係性が見られたということから関連がありそうという論文も見つかった。

それによれば被ばく線量が高いほど出血性脳卒中のリスクが高まる傾向が、確認されているのだ。男性では2.0グレイを超えた場合、一般の2.5倍に達しており、女性では2.2グレイ超で3.5倍にも達する。調査は1980年〜2003年にかけて、被ばく者9515人を追跡しており、信憑性はかなり高いように思える。
ただし、この論文で明確に出る被ばく量は2グレイ(シーベルト同じ単位とみなしてよい)であることや、発現するまでの期間も何十年と長いことから、脳卒中の増悪作用としての関与はあっても、主役ではないように思える。

本年1月3日のブログに書いたように血管が閉塞する場合には血栓因子の関与が大きいと思う。イギリスのMark P. Littleらは放射線の線量と血栓形成に関わる因子(MCP-1)の活性化の関係を「空間反応―拡散モデル(spatial reaction-diffusion model)」で解析し、両者間に相関関係を見つけた。
従って、私はこの因子の活性化が起きている可能性が一番高いと思う。この因子を測定し、実際増えていることが確認されればこの説の裏付けにもなろう。なお、脳卒中には脳溢血だけでなく脳梗塞や脳血栓も含まれるので、血栓の関与は大きいと言えよう。

それから、沿岸部地帯で頻発するということから脳卒中者の海産物摂取との関係も調査すれば意外な展開に至る可能性もあるかなと思った。

参考資料 (両方とも日本語)
1. http://www.tax-hoken.com/news_aA8YpQAaLe.html?right
2. http://www.rerf.or.jp/news/pdf/BMJopen.pdf 

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