トリチウムの被ばく影響についての考察

  • 2013/08/31(土) 11:49:10

水素の原子核は陽子が一つしかなく、それに原子核を周回する電子も一つしかない、原子の中でも最も単純なものなので、周期律表でもトップにランクされている。
この水素の原子核に中性子がひとつ付くと重水素(deuterium)といわれ、ほぼ倍の重さになる。重水素は自然界で0.015%の比率で含まれるが、原子が壊れて放射線を出すことはなく、安定同位体なので省く。

さらに中性子が二つ付くと三重水素(tritium, トリチウム)といわれ重さがほぼ3倍になる。<昨日超遠心分離法での分離が経済的に困難と書いたのは自然界では分子量16の酸素と分子を作っているので重量比はあまり違わないことが理由です。>
このトリチウムは放射性同位体で壊れるとき(半減期12.3年)弱いベータ(β)線を出す。

原子核内に中性子が入る前提条件は高速でなければならないので自然界では,宇宙線と大気の相互作用により天然に生成される。比較的最近新潟県で計測した数値は水1リットルで1ベクレル近くの値(参考資料)です。

人為的なものとして高速中性子を発生させる核実験装置や原発施設からも発生する。過去一番多く発生させたのは核融合実験や核実験時であり、実際、最も盛んに水素爆弾の実験が行われた1960年代は降雨中の濃度が100ベクレル/Lに達した時もあったそうですが、半世紀近く経過した現在は上述のように低い値に戻っている。

トリチウムの被ばく影響を考える時、水に含まれるトリチウムの場合には排泄が早いので比較的軽微ではないかと考えられる。一方、食物として植物や細菌などを経て有機化合物のトリチウムとして取り込んだ場合には、細胞の構成成分にもなるので、至近距離からの長期間に亘り被ばくすることが考えられるので影響が大きくなるように思える。

東電発表では放出されたトリチウムの総量は40兆ベクレルとのことなので、琵琶湖の水量(275億トン)で薄まったと仮定すれば自然界の値にプラスされるのは1.3ベクレル/Lなのであまり問題にならないように思える。しかしながら、これまでの経過を見ていれば発表数値が3ケタくらい簡単に増えることもある。
従って、福島の降雨中のトリチウムの測定を行い、数値を定期的に公表することが最も有力な判断材料を与えることになろう。環境庁は取りあえず福島県で定期的に測定し、公表すべきである。

             参考資料
http://mobile.pref.niigata.lg.jp/HTML_Simple/77/858/1614ebata.pdf

福島原発事故の規模はチェルノブイリの1/7から2、3倍へ拡大

  • 2013/08/29(木) 15:08:14

昨日のブログを読み返したら、汚染水の流失は大変な事態と書いたが、その程度についての量的な記載を忘れたことに気付いた。それで福島原発事故が大変な事態になっていることを量的な面からできるだけ分かり易く説明します。

2年前の今頃、国会の議論の中で放射性セシウムの量を聞いても事故の規模がよくわからないので広島原発を規準に比較したらどうなるかとの質問があった。
その時、広島原発の185個分と答えがあり、大きさが容易に頭に入った。
また同時に、チェルノブイリ事故と比較すると10数%(私は1/7と記憶した)との説明があったので、多くのヒトはチェルノブイリとの比較で安堵したと思う。
今問題になっている汚染水をこの図式で考えてみたい。

今回流失した300トンの汚染水の放射線量は京大の小出先生によればベータ線の線量は24兆ベクレルなので、広島原爆にほぼ匹敵するといわれた。福島第一原発構内に溜っている汚染水の総量は43万トンあり、濃度が同じとみなして比例計算すると、広島原爆約1400発分に相当することなる。従って、素人計算でも1400/185X1/7=1.1でチェルノブイリを少し上になったかという状況である。

なお、現在汚染水流失の事故レベルは3と判定されているが、何かのきっかけで大量流失すればすぐレベル7に格上げされてしまうことは容易に推察できる。

このような状況でもメディア報道からは深刻さは感じないが、現在の状況を国内の専門家はどうみているかいうと、英語論文のみの発信であるが、チェルノブイリ事故の2倍説(参考資料1)と3倍説(参考資料2)が公表された。

福島沖で海水中のセシウム濃度を測定している東京海洋大学のKanda教授は福島第一原発により放出されたセシウム137の総量は15.6京と算出した。
チェルノブイリ事故の放出総量8.5京なのでその2倍となる。なお、世界中(米、ソ連、中国、イギリス、フランス)で核実験が頻発に行われた時代に放出されたセシウム137を全部足すとこれくらいの値になるとのことだった。福島事故が如何にすさまじいか想像できると思う。

一方、Ebisawa核技術者は地下水まで溶質した量も加えて全てのセシウム137を算出すると27.6京となったので、チェルノブイリの3倍だった。

情報が少ない現時点での計算が多少違うのは当たり前なので二人の計算値はかなり近いものと解釈した。
従って、既にチェルノブリの2倍以上になったことは間違いないと見なせるだろう。

そのほか今回の流失問題では、今まで無視されてきたストロンチウム90とトリチウムが浮上してきた。ストロンチウム被ばく影響は骨に取り込まれると排泄が困難になることとβ線核種なので骨の近くにある造血細胞などは影響を受けやすくセシウムより何十倍(2から数百倍説まで諸説あり)も強い影響を受けるとみなすのが順当な考えであろう。
また白血病だけでなく糖尿病(娘核種のイットリウムが膵臓のインシュリン分泌機構を阻害)を起こすことになります。いづれにしてもストロンチウム90の簡易測定法は世界的にも認められているので其の方法の普及に努めるべきだ。
なお、骨ごと食べる小魚の摂食は測定値が示されるまで、少なくとも子供には食べさせるべきでないと思う。

トリチウムの放射線量は強くないが水素原子そのものなので、超遠心分離法で分離は可能であろうが経済性を加味したらとても除去など考えられない。

三重水素の生物的影響に関するレポートは知らないが天然の水でも極めて微量は含まれているので、いずれ調べてみるつもりでいる。

            参考資料
1.
http://enenews.com/water-with-pieces-of-nuclear-fuel-coming-up-from-ocean-floor-off-fukushima-coast-tokyo-professor-156-quadrillion-bq-of-cs-137-in-basements-getting-close-to-fallout-total-from-every-atomic-bombs-t
2.
http://enenews.com/nuclear-engineer-276-quadrillion-becquerels-of-cesium-137-estimated-to-have-seeped-into-water-that-fills-fukushimas-reactor-building-basements-triple-chernobyls-total-release-some-has-alr

原発からの放射性物質汚染水の流失防止に日本の総力を結集せよ

  • 2013/08/27(火) 13:01:45

福島原発事故から2年半が経過した頃になって、高濃度汚染水の大量流失が明らかになり、急に、世界のメディアから関心を持たれることになった。
報道される度にお粗末な対応が次々に明らかになってきた。経費節減で安くあげようとする行為が逆に経費増をもたらし、被害を大きくし、その都度信用も落としている。
海外のメディアからも東電の評価は落ちる一方だが、同時に日本の信頼性評価もそのたびに落としているとみなすべきだ。

東電は、努力したポーズを示してから、結局海に流さざるを得なかったというストリーを作れば納得してもらえるという、うがった見方さえもできてしまうほど場当たり的なひどい対応と思える状況にもなってしまった。

この考えのよりどころは海に捨てれば、太平洋にある膨大な海水で速やかに薄まるから心配ないとの考えであろう。
実際、原発事故後、愛人問題で有名になった原子力安全・保安院のスポークスマンは記者会見で「海水中に放出された放射性物質は潮流に流され、拡散していく。 魚とか海藻などの海洋生物に取り込まれるには相当程度まで薄まる」と話した。今でも原子力村関係者の基本的スタンスがこのようなものであれば、つじつまの合わない対応にも納得がいく。
ところがこの太平洋の膨大な海水で薄まるとの考えは、均一になるまでの時間を無視した実際起こりえない話である。何故なら太平洋の水が完全に混ざり合うまでに専門家は1000年かかると見なしている。

海に流失した放射性物質は海流にのって、深いところの海水とは混じらず、帯のようになった状態で、あまり薄まらずに4年前後にはアメリカ西海岸に到達すると海洋学者は想定している。

カレイドスコープ氏のブログ(参考資料1)によれば「ドイツのキール海洋研究所のシミュレーションでも同様の結果が得られているが、より具体的なのは、西海岸、特にバハカリフォルニアで日本の10倍の濃度になる、と結論付けたことです。」

海産物には生物濃縮もあり、魚は回遊するし、実際の影響評価は複雑であると思うが、海洋研究専門家から「福島の汚染水で太平洋は終り」とまで酷評される状況になったことは深刻に受け止めるべきだ。

しかも、この予測は今回の流失問題以前に出された結果であり、今回の福島からの流失報道を受けキール研究所では現在スパコンで、再度シミュレーションをやり直しているそうです。その結果が出れば一層深刻になることは明らかである。

海外の投稿者の論調もたったひとつしかないこの地球の生態環境の破壊は人類の生存に直結する問題であり、謝ったり、賠償で済む問題ではない、後世代の人類の生存にかかわる極めて厳しい問題と深刻に受け止められている。

多くの日本人は放射性物質の海への流失の影響の大きさを知らないが、これから白血病や糖尿病が多発してくればわかってくるであろう。しかし、其の時では遅過ぎる。

過去は変えられないが、未来は変えられる。太平洋の民でもある日本人は太平洋をこれ以上汚染させないように、一刻も早く、全身全霊を尽くすべきだ。これこそ、原発事故を起こした私たちの世代が我々の子孫のみならず、沿岸の諸国の子孫のために尽くすことのできる唯一の残された道であろう。

そのためには直ちに、国主導で原発事故復旧対策チームの担当大臣を決め、組織を作り、優先順位をつけ(例えば除染作業や三陸の漁業復興を延期しても、放射性物質の流失が続けば住めないし、漁業も再開不可能だ。多量の汚染水放出で作業員が近づけなってしまえば東日本の広範囲な地域が無人の地となってしまうであろう。)
福島原発を中心とした5−10km圏内の土地は買い上げ、汚染水保管タンクは全てステンレス製を用いて、溶接することはいうまでもない。また海側と山側と原発周囲はすべて遮断壁で囲むべきだ。

これらの費用で何十兆円使っても新たな流失を食い止めることができれば、後世代への惨事の損害との比較において、結局安いものにつくであろう。

           参考資料

1.  今回の流失報道前の計算、現在スパコンで再計算中なので更に悪化が予測される
http://financegreenwatch.org/jp/?p=35244
2.  ユーチューブですが、会話は英語のみです
West Coast of North America to Be Hit Hard by Fukushima Radiation

米海兵によるカリフォルニア地裁裁判の争点は被ばく知識差だ

  • 2013/08/24(土) 09:33:31

朝早く目覚めたので、米海兵による裁判の争点について考えていたら、東京電力は被ばく影響「がんをはじめとする放射線による影響は100mSvを超えると激増し、発生リスクにしきい値(閾値)はなく100mSv以下も起こる」を知っていたのに知らせなかった、即ち「ウソ」を伝えたので米兵は被害を受けたが訴状の根幹だと思う。

しかし、放射線被害に関する根本認識が日米で異なっていたら、ウソを言ったことにならない

放射線安全論で国民を洗脳してきた原子力村の専門家はこのことについて、裁判で堂々と反論し、争うべきだ。

原発事故後を振り返れば、事故後まもなく開催された講演会後の質疑で、T大の放射線専門家(東電の役員が絶賛していたヒト)は、聴講者からどこまで安全であるかの問いに1000mSv/時間と答えたので吃驚した。しかし、聴講者から疑義が出なかったので更に吃驚した<もっともこの映像はアップ後、翌日には削除されたが>。

今でも100mSv/年間まで安全と信じている日本人は多い。ところが、世界標準は100mSv/生涯(外部被ばくだけでなく内部被ばくも含めて)である。

そして、ヒトでは放射能によって奇形児が産まれないことが原爆後の観察で証明されたと専門家がメディアを通じて報道している。
ところが原爆後ダウン症の赤ちゃんを産んだ場合には、国家で補償をしていた。賠償をすることは日本の国が因果関係を認めたことであり、このことは国会議事録にも載っている。

またチェルノブイリの被爆地では健康な子供がほとんどいない町もあるという報告は最近もたらされたのに、無視されている。福島事故による最大の問題は遺伝的影響による後世代への影響であると私は思っている。
ところがヤマトシジミというチョウの奇形が報告されるや、研究費を迅速にカットされてしまった。チョウの場合には人間とのギャップは大きいが世代交代は早く遺伝的影響を安価で、迅速に行えるのにカットされた。

放射線影響研究が暗黒時代に入ったのは、省庁再編で原子力の推進母体である科学技術庁が文部省と合体し、文科省となったために、原子力村に支配されてしまったように想像する。

このように日本人の被ばく影響の認識が世界の規準とかけ離れ、日本の専門家が沈黙している中では、外圧を頼りに裁判で決着をつける以外に残された道はないように思える。
今まで被ばく安全論を唱えてきた専門家は逃げることなく、反論していただきたい。

福島の小児甲状腺がん悪化の一途、早急に対策を

  • 2013/08/21(水) 12:01:21

第12回福島県民健康調査室の検討委員会が昨日開催された。今朝早く、福島県県民調査委員会のホームページを開いたがまだ掲載されてなかった。しかし、幸いなことにOurPlanet-TV(参考資料1、2)で文書ならびに会議の模様が放映された。

福島県検討委(8/20)報告で甲状腺癌的摘出手術により新たな確定者が5名出て総計18名となり、穿刺細胞診により癌の疑いとされたものの総勢は25名となり、合わせて43名が甲状腺がんもしくは疑いと診断されたことになる。

分かり易い表現にすれば次のようになる。穿刺細胞診による陽性診断者が44名であった。そのうち19名の甲状腺がん摘出手術が終了した。摘出された甲状腺の組織標本の病理検査の結果、18名は乳頭がんであることが確定し、1名は良性結節と診断された。この18名の乳頭がん確定者から、統計処理をすれば有意な結果になるであろうが、統計処理に関する言及はなかったようである。

残りの25名の診断者について手術予備群と見なすことができるが、今回までの細胞診による誤診率は低く19名中1名なので約5%なので、残りの25名からは24名の、確定者が類推できる。従って、現時点における確定者は42名になることが想定される。

2年目の時点でチェルノブイリと比較できないほど大量発症したのにチェルノブイリは4年以降だからという理論は世界に通用しないのは自明である。
オーストラリアのカルディコット小児科医のように計測できなかった被ばく量が多かったからと考えるのが自然の解釈であろう。

今回は更に年少の事故時6歳(検査時8歳)の女児が悪性と診断された。この年代の子供が甲状腺がんになる確率は1000万人あたり、3人しかない。<この出典を失念しました。まっちゃんのブログhttp://ameblo.jp/misininiminisi/entry-11596347134.html
では「原発事故前の小児甲状腺がんの統計によると、0歳〜9歳までの発症の割合は100万人に0人とのことですのでほぼ一致していると思います」

今回この年代の母数となった6歳から10歳の受診者数は50,421人だった。母数を1000万人に揃えると200対3である。この数字からだけからも異常な事態が起きていることが類推されよう。最も重点を置くべき統計処理をせずに、従来のチェルノブイリに較べて早すぎるというスタンスにいつまでもしがみつくべきではない。

非常に憂慮すべき事態であるのに、会議冒頭では国連科学委員会の委員が福島の子供はあまり被ばくしてないので心配はないというような話しがあり、真面目に聞く気にもなれなくなってしまった。

ヨウ素131の正確な実測資料がない以上(もしあるなら時間的、空間的な膨大な資料をまず公表しなければならない)何んヒトも外部被ばく量を正確に算出できない。
更に甲状腺への影響では内部被ばくの影響が何百倍も大きいのにこの面からの測定データもない以上、被ばく量の議論は時間の浪費に過ぎないであろう。

前回書いた郡山市の穿刺細胞診から陽性率が4割とも癌の疑いが出る率は例数が増えても16人から8人と50%もあり、非常に高率であり、憂慮すべき事態といえよう。

日本の未来を担う子供を絶対に守るんだという視点があれば、甲状腺がんに付随して起こる、リンパ節転移や肺転移を防ぐ視点に立った議論が盛り上がる筈なのに、個人保護とかの議論があり、視点がずれていると思った。

福島の子供検査を急ぐだけでなく、隣県も行い、その結果によっては関東、東北を、さらには全国規模の調査が必要になるかも知れない。

福島原発事故を起こした私達世代は、何もわからない子供達を守る責務を負っていると思う。その視点を欠く会議では未来の日本を守れないであろう。

参考資料(OurPlanet
1.Pdf文章
http://www.ourplanet-tv.org/files/20130820shiyo.pdf
2.報告会のTV中継画像
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1630

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