魅力的だった高速増殖炉は事故続発で世界は見切りをつけた−1

  • 2011/09/19(月) 11:23:26

プロローグ:ウランを原料とする原発の最大の弱点は燃焼後発生するプルトニウムを初めとする大量の放射性廃棄物であり、ウランからプルトニウムというワンステップしかない燃焼効率の悪さだった。

上の2点の欠点は高速中性子を利用しながら核燃料の増殖を行える高速増殖炉{英語でFast Breeder Reactorというのはペットのブリーダーように繁殖する意味}を使えば解決できる。原爆技術から原発への利用を考えた時、第一に考えられたのが高速増殖炉の開発だった。

しかし、半世紀を超える先進各国の懸命な努力にも拘らず、原子力発電の開発段階の5ステップ(実験炉、原型炉、実証炉、商業用実証炉、商用発電炉)ある中で3ステップまで達したのが最高到達点であった。結局、後から開発された軽水炉が現在における原子力発電の主流となった。

先進諸国における半世紀に亘る開発において、類似の事故が多発した結果、先進諸国は見切りに至った。各国の状況、事故の理論的問題、今後の動向に関して分量の関係で分割して述べる。

1.各国の状況
アメリカ:1946年、世界で初めて臨界を達成した「クレメンタイン」をはじめ、7基の実験炉を作った。1982年 原型炉着工も、プルトニウム拡散防止政策のため、83年計画を中止した。
ところが、その後の運転中の実験炉において相次ぐ事故が発生した。
1994年、クリントン政権は莫大な研究開発費を投じても、商業炉として採算が採れる見込みがないと判断して、高速増殖炉を含む核燃料サイクルの研究・開発の中止を決定した。始める決断も最も早かったが、諦める決断も最も早かった。といっても48年間もかかっているが。

イギリス:1959年に臨界に達した実験炉DFRは、その後燃料破損事故やナトリウム漏れ火災事故を起こし、本来の増殖炉としてではなく、照射試験に利用された後廃止された。
ついで、1974年に臨界に達した原型炉PFRもナトリウム漏れ火災事故を繰り返した挙句、1987年には蒸気発生器細管の大破損事故起し、アメリカに次いですぐ94年に中止を決定した。

フランス:世界で唯一、開発の第3段階である実証炉スーパーフェニックスを建設した。
しかし、その運転実績はいずれも事故の連続で惨憺たるものだった。スーパーフェニックスは、85年の運転開始後、ナトリウム漏れ火災、ナトリウムへの空気混入等の事故を繰り返したので中止に追い込まれ、「高速炉の工業的発展は2050年より先に持ち越される」との結論をだし、事実上撤退した。
代わりにかMOX燃料を使ったプルサーマル型に後退した。

ドイツ:実験炉KNK-兇1985年に臨界に達したが、事故を繰り返しながら結局照射試験炉として使われ、91年に閉鎖。
原型炉SNR-300が1985年に完成したが、市民の激しい反対運動や研究者のさまざまな危険性の指摘などを受けて州政府が燃料装荷を許可せず、膨大な費用をかけて建設されながらついに1991年、連邦政府が開発中止を決定した。最終判断は、万一炉芯の損傷で核爆発反応が起こった場合のエネルギーが過小評価されており、実際は炉が耐えられないという専門家の指摘だった、ついに運転されることなく廃止されたSNRー300は、その後民間会社に引き取られ、核開発の負の遺産の標本として多くの見学者を集めているとのことです。

中国:数日前のブログをよんでください。

日本:1972年実験炉「常陽」が完成し、1994年原型炉「もんじゅ」が臨界に達したが、ナトリウム漏えい事故により現在発電はしていません。

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高速増殖炉の原理、歴史、現状、再処理工場

 3.11以降、色々な知識を得たが、大きな問題の一つが高速増殖炉だ。  その対象を正しく知るために、Newton最新号などからの情報をまとめておく。  以前、原発の歴史を調べていて意外だったのは、軽水...

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  • 2013/12/22(日) 04:19:50

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この記事に対するコメント

ポストさんへ

詳しい情報提供ありがとうございました。今日読んだ記事ですが、文科省は高速増殖炉の新規予算100億円を7-8割削減するが、もんじゅの維持費用200億円はかかるとのことで、核燃料リサイクルの費用はそのままのようです。止める宣言なしのなし崩しの撤退のようです。しかし、廃止宣言をしないと費用の削減もあまりできず無駄がだらだら続くと思うので決断する時期は早ければ早いほど良いと思います。

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