放射線の生物への影響はDNAを介して起こる−1

  • 2011/09/30(金) 23:55:04

プロローグ:福島原発事故の後、広島・長崎原爆およびチェルノブイリ原発事故の調査結果から100ミリシーベルト以下の放射線の影響は小児甲状腺がんが有意に発症するくらいでそのほかはほとんど心配ない旨を強調する解説がメディアより盛んに流された。更に低線量被ばくは健康に良いとする説(ところがラドンはタバコに次ぐ肺がん原因物質であることは世界の定説)まで流布されだした。
その結果、放射線の影響は直接被ばくによる癌だけが心配になるという風になった。

従って、早い段階からDNAに及ぼす影響について、系統的に書いてみたいという思いはあった。しかし、遺伝学者や、ゲノム研究者のような専門家からの発信がより適切ではないかと考えたことや、メディア報道での間違い報道も多かったので、そういった中で、DNAに関連するものがあればその都度書いてきたが多くは放射線に関する問題だった。

福島原発事故から半年が経過し、子供を持つ母親を中心に海外報道や、内部被ばくに関する発信も増え、内部被ばくを心配するヒト達も増えてきた。
また、先ほど(9/30日19時前)のNHKニュースでも肥田医師による内部被ばくの話もあり、メディアもかなり変わってきたなと思う。
この辺でDNA障害に関連して系統的に考えたいと思った次第です。

まず、初歩からDNAとは何かについて述べる。細胞は23対の染色体を有し、その染色体は圧縮され絡み合ったDNAの束である。それぞれ一連のDNA鎖は、リン酸群、糖(デオキシリボース)、および塩基(グアニン、シトシン、チミン、アデニン)で構成される単位ヌクレオチドが繰り返し連なってできている。通常DNAは非常に規則的な2本の鎖で構成されるらせん構造をしており、2本鎖はグアニンとシトシンおよびチミンとアデニンの間で水素結合により結びつけられている。こうした結合のそれぞれは一つの塩基対であり、ヒト・ゲノムは約30億の塩基対からできている。

放射線障害は主にDNA損傷によってもたらされる
DNA損傷には3種類あるが、塩基切断と1本鎖切断の場合には対の1本が残るので修復は容易である。ところが、2本鎖切断の場合にも修復機構は働くが元に修復するのは容易ではなくなる。
また、幼児では成長のため増殖が盛んであり、大人でも皮膚などは絶えず入れ替わるので増殖しなければならず、その場合には二重鎖のDNAが分かれて1本鎖となり、対が作られ、新たなDNAが作られる。この別れたばかりの1本鎖状態で損傷すれば、修復が難しくなる。

このようにして設計図であるDNAが壊れると、その状態に最善な修復機構が働くが、その間は複製作業はストップする。修理が済めば増殖機構がはたらくことになる。
修復不可能となった場合や間違って修復されたことが認識された場合にはアポトーシス機構が働き、その細胞は壊される。
修復の間違いがごくわずかだったりした場合は見逃される確率も高くなるだろう。いくら優秀な工場でも何十億個の製品を作れば必ず不良品がでるのと同じようなものである。

このようにして生命の設計図のDNAの損傷が生ずれば、その影響は極めて多岐にわたり、その影響は徐々に現れる。癌はDNA損傷の一事象にしかすぎなく、奇形、遺伝子への影響、免疫系、心臓血管系、中枢神経系、消化器系、腎臓などあらゆる臓器にさまざまな影響を与える。
DNAを介さないと考えられるメカニズムには、例えばセシウムの場合、細胞膜のカリウムイオンチャンネルに及ぼす影響などあげられる。

生物といってもウイルスの設計図を担うのはRNA(天然痘ウイルスは例外でDNA)であり、修復間違いをチェックする機構もなくインフルエンザウイルスもエイズウイルスも絶えず変異する。
細菌では核のDNAが設計図となっていて修復機構をチェックするDNAポリメラーゼも働いているが単細胞生物であり、多細胞生物とは余りにも違いが大きいので省略する。

植物や昆虫などの生物になると、ヒトとも基本骨格は同じなので、歴史的経緯も踏まえ略記する。
スタッドラー博士はトウモロコシにエックス線を照射することによって突然変異を起こさせることができると1928年に発表した。 それ以来農作物の新品種を作るために放射線を照射することは半世紀位に亘り行われてきたが、現在は遺伝子組み換え技術が導入されたので使われることはないと思う。

放射線による植物への定量的な研究では、市川定夫博士によるムラサキツユクサの研究により、微量の放射線によっても突然変異を起こすことが証明され、世界でも高く評価された。
ムラサキツユクサのおしべの毛は一列に並んだ細胞から成り、その先端部分の細胞が分裂を繰り返して発達する。それが放射線などの影響で青の優性遺伝子に突然変異が起こるとピンクになり、容易に観察できるという特徴があった。実際、日本の多くの原発周辺での大事故でない放射能漏れも観測できた。
植物での観察であるが、「微量なら安全」「微量なら無視できる」との宣伝方法に問題提議する結果となった。

放射線問題に関して、低線量の放射線の影響について、特に内部被ばくに関するヒトのデータがほとんどなく、評価できないにも拘わらず、悪影響が証明されてないから安全だという論理は物理学者の論理かあるいは原子力村の論理か知らないが、他の業界では使わない論理である。何故なら農薬や医薬品ならばヒトでの安全性が確認されてないものはその旨記載され、代わりに詳細なヒトに近い動物での実験データが示されて、通常100倍の安全係数がかけられ評価される。

その意味では内部被ばくに関する基礎的データは完全に不足しており、原発を推進する国々は国際的に協調して動物試験でのデータ作りを取り進める必要があろう。


<<露地裁倍シイタケから放射セシウム1955Bq/kg検出、ほか | ホーム | もんじゅ出力試験費22億円計上⇒方針決定を早く>>

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

<<露地裁倍シイタケから放射セシウム1955Bq/kg検出、ほか | ホーム | もんじゅ出力試験費22億円計上⇒方針決定を早く>>

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する

HOME |