震災後の疾病の特徴は心不全、ACSと脳卒中の増加

  • 2012/03/23(金) 15:38:58

東日本大震災以降、心不全をはじめ、ACS (Acute coronary syndromeの略で急性冠症候群のこと) および脳卒中などの循環器疾患が有意に増加したことを東北大学循環器内科学の下川宏明氏が発表した。
今月開催された日本循環器学会(私も本学会には50年以上前から約30年間会員だったことがある)にて、特に心不全の増加は、過去の大震災疫学調査では報告例がなく、東日本大震災の特徴の1つであることが浮かび上がった。

「下川氏らは、宮城県の救急車で搬送されたすべての患者記録を調査し、東日本大震災の発災前後における循環器疾患の変動を明らかにした。加えて東北大学循環器内科におけるデバイス植え込み患者および冠攣縮性狭心症患者も対象に、震災の影響を検討した。
救急車搬送の調査は、2008年から2011年6月30日までを対象とした。対象地域は宮城県全域だった。県医師会の全面的な協力が得られたこともあり、宮城県内12消防本部すべてが協力に応じてくれたという。 調査期間中の救急車の出動件数は、合計で12万4152件だった(救急搬送例の初診時診断率は56.2%)。この全例を対象に、心不全、ACS(急性心筋梗塞と狭心症も含む)、脳卒中(脳出血、脳梗塞)、心肺停止、肺炎の症例を調べた。その上で、発災前後および同時期の過去3年間について、各疾患の発生件数を比較検討した。
 下川氏らはまた、今回の震災では津波による甚大な被害を受けた沿岸部と津波の被害を免れた内陸部では事情が大きく違うと考え、沿岸部と内陸部に分けた解析も行った。
 解析ではまず、各年ごとに2月11日〜3月10日と3月11日〜4月7日の2期間で各疾患の発生数を比較した。その結果、2011年だけが、3月11日〜4月7日の期間の方が2月11日〜3月10日の期間より、心不全、ACS、脳卒中、心配停止、肺炎のすべてが有意に多かった。例えば心不全は、2011年の2月11日〜3月10日では123件だったが、同年3月11日〜4月7日には220件と有意に増加していた(P<0.001;註:pとはprobabilityの略で0.05以下なら有意な変化とみなす)。また、2008〜2010年の各年の3月11日〜4月7日の発生数は、それぞれ101件、100件、126件であり、2011年の方が有意に高かった(P<0.001)。
 次に、2011年の2月11日以降、4週間ごとの週間平均発生数を追ったところ、心不全は30.8件、55.0件、35.0件、31.0件、29.3件と推移していた。同様にACSは8.25件、19.0件、9.25件、5.0件、10.0件、脳卒中は70.8件、96.5件、82.0件、73.5件、62.5件、心肺停止は49.0件、61.8件、46.0件、42.3件、40.3件、肺炎は46.5件、89.3件、60.5件、45.5件、47.5件とそれぞれ推移した。

 過去3年間の週間平均発生数と比較すると、2011年3月11日〜4月7日の発生数は、調査した疾患すべてにおいて有意に多くなっていた。
 なお、ACSにおいては、2011年5月6日〜6月2日の発生件数が過去3年間の平均週間発生数より有意に少ないことも判明。この点について下川氏は、「ACSの予備軍が前倒しで発生した可能性がある」と指摘した。
 着目点の1つである沿岸部と内陸部の比較では、沿岸部の内陸部に対するオッズ比を調べたところ、肺炎で1.54(95%信頼区間:1.06-2.26)となり、沿岸部での肺炎の患者が有意に多いことも分かった(P=0.023)。
 このほか、デバイス植え込み患者および冠攣縮性狭心症患者を対象とした検討では、不整脈(特に心室性)の増加が見られ、心臓再同期療法(CRT)治療の効果の減弱や冠攣縮の増悪の可能性なども明らかになった。」

上述のコメンテーターとして登壇した秋田大学循環器内科の伊藤宏氏は、「東日本大震災では地震に加え、津波の被害が甚大であったことから、被災者のストレスは多大であったと推定される」と指摘。下川氏らの検討によって、「こうしたストレスは心不全の要因および増悪因子となりえることが示された。また肺炎が沿岸部で有意に多かった点については、津波後の粉塵あるいは冬季であったことの寒冷も関連していると考えられ、このことが心不全増加に関与した可能性が高い」などと考察した。

以上は学会でのエヴィデンス報告ならびにその解釈についての報告である。その際、出席者から放射線の影響に関する質問があったか否かはわからない。

寒さや津波のストレスは世界中の人類が過去に何度も経験しており、今回の震災が過去一度も経験しなかったことは、原発事故による放射性微粒子による影響であった。

カリウムイオンより周期律表で二周りも上のセシウムは独自のチャンネルを細胞膜に持たないので、狭いカリウムイオンチャンネルを無理に通る(率で15%)ことになるので房室伝導に障害のあるヒトなどでは心室性不整脈の誘発を起し易いのでは想像している。
また肺炎の重症化は免疫力低下によることで説明がつき、何故今年の感染症患者が多いかの理由と一致している。

本学会の報告のエヴィデンスは普遍の事実である。一方、解釈というものは、周辺の知識が深まると共に変わる、変動的なものである。

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