食道を介する内部被ばくについて(大幅増補)

  • 2011/06/11(土) 18:26:43

先日書いたように気道から入った放射性物質は付着したキャリアの性状とサイズが影響する。
飲み、食べたものは小腸から吸収された後、門脈、肝臓を経て心臓から全身に分布する。
しかし、吸収されなくても、放射性物質が消化管を通る時、特に表面積が大きい小腸では放射性物質と直接接触し、その時間も長いことから大きな影響を受ける。
小腸内面には無数の襞があり、更にその粘膜表面に絨毛がある。絨毛の底部には幹細胞があり、放射性物質はこの幹細胞の分裂を抑制することなどにより、下痢を起こし易くする。したがって、放射性物質を口から取り込んだ場合の最初の兆候は下痢と考えられる。なお、幹細胞の抑制は放射性物質が通過してしまえば次第に回復に向かう。
次に放射性物質の小腸絨毛を通過するには溶解しなければならないが、主要な放射性物質はいずれもイオン化しやすく吸収され易い。従って吸収も良い。以下個別の放射性物質ごとに述べる。

●ヨウ素131
ヨウ素は周期律表で塩素と同じく右端のひとつ手前にあるので、電子を受け取り、陰イオンとなり易い。しかし、プラスイオンと塩を作ってないヨウ素や放射性ヨウ素はまず酸素と結合してからナトリウムまたはカリウムと塩を作り吸収される。
人体のホルモンでヨウ素を含むのは甲状腺ホルモンだけである。吸収されたヨウ素131も放射性のないヨウ素と同様に甲状腺にある濾胞上皮細胞に取り込まれ、甲状腺ホルモンが合成される。しかし、濾胞上皮細胞内に十分なヨウ素が存在すればヨウ素131が血液中にあっても取り込まれることなく尿として排泄される。
安定ヨウ素剤はヨウ化カリウムという形で最初から塩になっており吸収は速い。上述の理由により摂取は被ばく前が最も有効である。
ヨウ素131の半減期は8日と短いが甲状腺移行した場合は甲状腺癌が問題になる。

●セシウム137
セシウムはカリウムと同じく周期律表の左端にあり、最外殻にある一個の電子を放出して陽イオンになり、生体内に大量に存在する塩素と容易に塩をつくる。ということは可溶性が良いということであり、吸収率はともにほぼ100%である。しかし、放射性でないセシウムは普段摂取することもないので検出限界以下である。

カリウムイオンは細胞内に高濃度存在するほか血液、細胞外にもかなりの濃度で存在し、ヒトでは全部で200gとなる。
カリウムの場合ややこしいのはカリウム40という12.8億年の半減期を有する放射性物質がごく僅か(0.012%)存在することである。この放射能は直接被ばくの場合のバックグランドのようなものであり、生まれてから死ぬまで常に一定量の放射線を放出する。
放射線被害を考える場合には、この量以下か以上かは判断基準としての目安となるであろう。
この放射能を計算すると6000ベクレル*となる。
一方、基準値量の放射性セシウムを毎日摂取した時、どれくらいの値になるかを計算したら、<5/28付ブログ、毎日200Bq/kgを100日摂取すると仮定し近似計算>1万6千ベクレルとなった。基礎量をプラスすると2万2千ベクレルとなり影響の可能性を無視できないであろう。従って、セシウムの基準値を飲料水では世界保健機構(WHO)基準の10Bq/L、食品も早急にアメリカ並みの170Bq/kgに引き下げるべきである。世界基準に合わせれば観光客も増えると思う。
なお、この1万6千ベクレルの放射性セシウムの重量を算出**ところ0.0001μgであった。 従って、セシウムはカリウムに比較して超微量しか存在しないことがわる。

●ストロンチウム90
ストロンチウムは周期律表でカルシウムと同じく左端2列目にある。従って、カルシウムと同じく2価の陽イオンになり易く、水に溶け、吸収率は比較的良いが(乳児60%、成人30%)、カルシウムの吸収率より低い。放射性のないストロンチウムは体内に全部で320mg存在するのでカルシウムの1/3000量になる。カルシウムは骨や歯の中に多量に存在し、約1kgと大量に存在する。そのほか、微量であるが筋肉、血液。神経など存在し、生理機能の維持に非常に重要な役割を担っている。
ストロンチウム90はカルシウムの代わりに骨に沈着すると、背骨に接してある骨髄の造血細胞はすぐ近くにあるのでストロンチウムから出る電子線の影響を強く受け白血病などを起こし易くなる。
このストロンチウム90は体内からなかなか抜けず半分の濃度になるのに約50年もかかる。しかも物理的半減期は約30年と長い。このストロンチウムを口に入れたら、そのヒトは一生逃れることのできない十字架を負うことになる。
半世紀以上前(5/21ブログ参照)ビキニ岩礁で日本人船員、推定約二万人が被ばくしたのにその全ての資料は100万ドルの補償金の見返りに政府により全て破棄された。なんと虚しいことかと残念に思った。 更に今回の事故で再び同じ過ちを犯そうとしている。現在のようにストロンチウムの情報がほとんどない状況では被ばくしてもモルモットとして後世のヒトに役立つこともできない、まさしく犬死だ。

しかしながら、幸運なことにストロンチウム摂取の主経路は汚染水を通しての魚介類を介すると考えられる。この系での汚染は生物濃縮連鎖を介するので、時間もかかる。
今からでも、小魚を食べず、魚でも骨や内臓は避けることにより防衛可能である。
なお、コウナゴの検査はセシウム137だけであり、ストロンチウム90の測定は行われたことはない。知識を持っている者だけが自己防衛できる。

*:K40の放射線量Bq=6x10^23x1/39.1x0.00012/12.8x10^9x12.8x109x60x60x24x365
**:16oooBqのCs137重量=16000x60x60x24x365x30x1.44/6x10^23x137

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