精子の被ばくによる子世代のDNAへの影響

  • 2011/10/22(土) 00:29:21

タイトルには放射線の生物への影響はDNAを介して起こる−4
サブタイトルが精子の被ばくによる子世代のDNAへの影響ですが、索引Index上サブタイトルとタイトルを入れ替えることにしました。

不妊原因の推定ができるようになってから数十年前までは、不妊の原因で精子側に問題がある夫婦の率は約2割だった。しかし、その後男性側の原因が多くなり現在は五分五分となり、この傾向は今後も続くものと予測されている。従って、不妊とは多くは男性側に原因だという時代がくるものと予測されている。
この原因は、50年前と比較すると男性の精子数が半分となり、精子の活動性が低下し、形態異常な精子の比率が増加したためである。

しかし、どうしてこうなったかについては環境ホルモン(女性ホルモンと構造が類似)による女性化、米・ソ核実験競争時代の放射性物質の影響とか、携帯電話やリモコンによる電波とか、喫煙、精神的ストレスとか諸説あるがはっきりしてない。

一方、哺乳類動物の精子が変化したという報告はない。従ってヒトにだけ起きているが、日本だけでなく先進諸国共通に起きている現象である。そのため、国際的に研究する会議「男子をなかだちとする発達毒性に関する国際会議、Conference on Male-Mediated Developmental Toxicity」も10年前から開催されるようになった。そのうち、原因が解明されることを期待する。

いずれにしても人間の精子の近年における劣化は著しいので、放射能などによるひと押しの影響も甚大なものになるであろうと卵子に対する影響より先に書くことにした。
前置きが長くなってしまったが、まず受胎とともに始まる精子の誕生までの長い道のりを述べ。精子が放射線被ばくを受けた場合の子世代への影響についてチェルノブイリの結果について述べる。

まず受胎後から出生前までの期間について、卵子と精子の合体した3週間以降に卵黄嚢壁に成熟生殖細胞が出現する。< (参考資料1.の図1−7)>
その後、これらの細胞は第4週末〜第5週の初めに原始生殖巣に到達し、中胚葉由来の隆起細胞より作られた男児なら精巣へ、女児なら卵巣へ移行し、原始生殖細胞(最近は始原生殖細胞ともいう)として誕生の時を待つ。従って、胎児が被ばくすることは、同時に孫にも影響が及ぶことを意味するが胎盤内にあるためか被ばくの影響は比較的出にくい(但し、内部被ばくはの場合はよくわからない)。

生後しばらくして原始生殖細胞は分裂をはじめ、精粗細胞となる。
精祖細胞から精母細胞への分化成熟は思春期以降に始まり,それ以降は間断なく続けられる。
精母細胞は減数分裂を行ない、半数体である精娘細胞となる。
精娘細胞は第2の成熟分裂を行ない、精子細胞となる。精子細胞は丸いので運動性がないので核は濃縮し頭部となり、オタマジャクシのような精子ができる。
以上のように、いくつもの変態をとげて精子ができる。

放射線の影響は細胞分裂の周期が短い、即ち増殖が盛んな細胞ほど影響を受け易い。またDNAが開き一重鎖の時が最も影響を受け易く、減数分裂も行う生殖系では特に影響を受け易い。またDNAは遺伝子そのものなので、その変化は何世代にも引き継がれていくことになる。

<新聞などでの放射線影響図で、胸部レントゲンあるいはCTの被ばく線量はいくらかと表示されている。しかし、放射線の影響が最も大きく出る精巣あるいは卵巣は含まれていない(乱反射というごくわずかな影響はさけられないが)ことから同じ線量を被ばくしてもその影響は小さいとみなせる。>

精子を介する遺伝障害について、放射線被ばくによる継世代影響は既に動物実験では証明されている。

ウクライナにて子世代のDNAに変化が起こることを中込先生が書かれていますので紹介します(参照資料2)。ヒトでもDNAは同じ配列が反復することが多い。ミニサテライトはサテライトよりもずっと小さいがそれでも数十塩基ほどの区間のDNAが、何回か反復したものである。反復回数の個人差が多いこと、回数が簡単にわかるのが特長で、また特に変化が生じやすい種類が知られているため、今回はそれらを選んで調べられた。

被爆した父の子は,ミニサテライトの長さの変動(反復回数が子では父と2-3回異なる)が見つかる頻度が,1.6倍に増えた。 被ばく二世DNAに,放射線によると思われる変化が見つけた。即ち、精子やその前段階の細胞の被爆で生じたDNAの変化が,子で見られたことを意味する。
ただし父が被爆した場合だけで母の場合がなかったがこの理由については次回書く。このようにチェルノブイリで最も問題なのは遺伝子障害による世代間に亘る影響と思う。
以上の理由で、原発作業者の場合、大量の直接被ばくを受ける可能性があることから、原発作業に従事する前に、予め精子を冷凍保存しておくことを奨めます。

高速ゲノム解析時代に突入した現在、ゲノム科学はものすごい勢いで進歩しており、放射線の遺伝子に対する影響の証明は疫学でなされるものでなく、具体的なDNA配列で示される時代になった。従って、福島の被ばく者においては現実(5年以内)になることは間違いないが、問題は被ばく量の検査がされてないことであろう。なお、甲状腺がんについては被ばく量が把握されてなくても指紋斑で因果関係を類推できるであろう。

参考資料
1. http://onodekita.sblo.jp/article/48387629.html
2.http://web.mac.com/nakagome1/iWeb/Site/4440B23E-F002-4547-84F0-F0B0DDD9BECF.html

農作物中のセシウム濃度は土地の濃度と関係している

  • 2011/10/18(火) 14:51:59

昨日のNHKあさイチのテレビ報道を見てびっくりした。福島の須賀川の自家栽培野菜を摂取する農家で3度の食卓に出た全ての食品を1日ごとにまとめ、1週間計測した結果、6日間ゼロベクレル/kgでたった1日だけセシウム134が3.66ベクレル/kgだったのでほぼゼロレベルとみなしても良いと思った。

何故なら、ある土地から収穫した農作物中の放射性セシウム量はその土地に降下したセシウム量と無関係とは考え難いからである。
従って、本来は放送する前に、すぐにでもそのお宅の野菜畑の放射性セシウムの濃度を測定すべきだった。福島県の平均的な値なのか、低いのか、高いのかを含めて、公共放送なので確かめておくべきだった。

政府も早急に調査し、放射性セシウムの作物濃度と農地汚染度は全く無関係であるかを確認すべきである。特殊農業技法を持っているならば、何億円払っても教えていただく価値がある。何故なら、除染作業で最も困難な農地の除染作業など一切不要になり、今後は住宅地域の汚染対策で済むので、何十兆円の経費節減につながる。

また郡山市の地元野菜をかまわずに食べている家庭でも1週間ゼロレベルだったことである。この場合は検証法がないが、確率的に極めてまれなことがおきた。即ち何と幸運な1週間が生じたことと思った。ホールボディカウンターで測定した結果の値が50ベクレル以下の数値(この数値はヨーロッパでで陽性と陰性の境界値)が示されたならば、6か月も幸運が続くことは考え難いので、信じなければならないと思う。

レベル7になるほど大量に放出された放射性物質の多くは福島県に降下したのに、福島県の食物がゼロということは非科学的であり、たまたま福島県でも放射性物質の降下のないところあるいは、他県産の野菜がたまたま買えたということであり、1週間の間、たまたまそういう幸運に恵まれたことを意味する。
出演者がいうような福島の野菜が放射性物質ゼロを意味しなく、原因不明の偶発的事象が起きたと考えるべきである。

次に東京の2家庭、北海道でわずかな放射性セシウムが検出されたが半減期2年のセシウム134だったので、福島原発由来なことは間違いないであろう。愛知県より西になると降下した量も減り、北海道もほぼ同様だと思う。そのために出たのか、西日本と東日本で野菜が移動しているのだろうか?それとも汚染された腐葉土などがばら撒かれていたためだろうか?よくわからないことが多い。
広島のゼロの報告については、福島から遠いこと、野菜などの交流も少ないであろうとも考え、本件についてだけは何ら疑問も持たなかった。

最近でも市民測定所(参考資料1)の結果では、個々の野菜では出ている。
個々の野菜、穀物であるのに、それらを足し算すればゼロになることは論理的にありえない。いずれにしても、飲料水、ジュース、牛乳、魚、肉など口を介して摂取する全ての総量に関して、民間の検査所も含む多くの機関で実施し、確認されることによってのみ今回の報道の真偽が判定されるだろう。

参考資料1. http://www.crms-jpn.com/mrdatafoodcat/food_vegetables.html

放射線の生物への影響はDNAを介して起こる−3

  • 2011/10/15(土) 11:54:38

3.障害されたDNAの修復および複製について   
DNA修復作用と免疫作用とは別なメカニズムなのに両者はしばしば混同されて単に免疫という言葉で表現されることが多い。
免疫作用機構は体の中に存在しない外部から侵入してきた病原体などに対し抗体を作ることであり、ノーベル賞を受賞した利根川進教授がが発見したような病原体に合わせて最小限の素材を用いて、病原体に立体的に適合するような抗体を作ることである。

一方、DNA修復はまず壊れたDNAの状態(塩基結合、糖との結合、リン酸結合など)を正しく認識すること。その情報に基づいていくつもある修復機構の中からの最適な手段の選択、最後に工場の品質検査と同じで修復が正しく行われたかのチェック機構と三段階がある精緻を極めたシステムである。

ウイルスはRNA(天然痘ウイルスは例外でDNA)できているが、この最後の段階を欠いているために増殖過程で複製された変異が見逃されるために絶えず変身している。典型的なものはエイズウイルスであり、感染したヒトのウイルスも時がたてば別の型に変異してしまう。ところがDNAでは複製による間違いも少ない上、修復後のチェックも行われる。間違って複製されたらDNAが見つかればその細胞は壊され。DNA修復の間違いの起こる確率は1〜100億回に1回と極めて低い。

修復について、塩基結合がバラバラになっても1本鎖が無傷ならば相手の塩基は決まっているので修復が容易である。
勿論DNAはデオキシリボスという五炭糖やリン酸とも結合しているので、これらの結合が壊れても修復できるようにいくつかの修復機構がある。

次に二本鎖の同位置の塩基が二つ同時に壊れた場合は、難しくなるが、方々にある区切り点ごとに複製して修復する。従って、電気製品が壊れた時、昔は故障した部品1個だけを取り換えていたが、今はパーツごとに取り換えるので一本鎖故障は個別に、二本鎖はパーツごとのようにイメージしてもらえればと思う。
このパーツの作り方の主なものに二種類ある。一つは一般に良く知られている相同組み換え(homologous recombination)で、もう一つは非相同末端再結合(Non-Homologous End-Joining)であり、次の細胞の複製時に起こる修復と同様である。

次に細胞の複製について
細胞の寿命について、一番短いものは2日前後の胃壁や小腸にある上皮細胞で、次いで血小板や赤血球で、皮膚表皮細胞が2-3カ月です。長いものでは脳細胞や心筋は一生涯生き残るものもあります。脳細胞は再生しないと記憶していましたが、再生するとの報告も結構沢山出てきたようですが全部の脳細胞ではないと思います。 細胞の中で心筋細胞は酸素不足や栄養不足に最も強いもので、骨格筋のエネルギーとして使われた後の乳酸までも利用できる。従って心臓のポンプ機能が止まる時も冠血流遮断により壊死した部位以外の心筋細胞は生きています。そのように悪条件にも耐える能力があるためか、心筋の1年間に再生される割合はたった1%位(参考資料1)しかない。

<少し脱線しますが、セシウム137(γとβの両崩壊する)は直接被ばくの時はガンマー線の影響を主に受け、内部被ばくではベータ線被ばくが主になる。内部被ばくで心筋細胞が損傷を受けても再生が余り行われないことから、参考資料1でバスビー教授が語るようにセシウム137のレベルは50ベクレル/kgに長期間、暴露され続ければ、心筋の1%を超えた心筋細胞のプログラム死が起こるならば、この指標というのは発がん問題をはるかに超えるであろう。高線量地域以外の人では内部被ばくだけに注意すれば良いので、ベクレルで管理する方が簡単のように思う。
急死者で心臓に原因があった場合、尿のベクレル値が公表されれば参考になるが、そういう情報が全くない以上、バスビー博士提唱の数値<50ベクレル/kg>に長期間、暴露されれば心臓死に連ながることであり、極めて重大である。>

上記の細胞は、生体内での役割に応じて、それぞれ決まった周期で細胞分裂を繰り返し増殖している。分裂する細胞にとって、特に重大なDNA損傷は、DNA二重ラセンの両方の鎖の切断である。相同組み換えの場合、切断部の修復の際に用いる鋳型としてまったく同一か、よく似た配列をもつゲノムを利用する。この機構は細胞周期において、DNAの複製中か、または複製終了後の間において主に用いられると考えられる。 これは損傷を受けた染色体の修復が、新しく作成された相同な配列を持つしまい姉妹染色分体を利用することで可能になる。

非相同末端再結合とは、損傷により生じた二つの末端をつなぐことである。このプロセスではDNA配列がしばしば失われるため、修復が変異の原因となることがある。 この結合はDNA複製前の、姉妹染色分体を利用した相同組換えが不可能な場合に主に行われる。
DNA損傷などの遺伝子異常が起きると、それを検知して細胞周期を一旦停止させる機構が存在することが発見され、この遺伝子異常を監視し細胞周期を止める機構は細胞周期チェックポイントという。細胞増殖している間、絶えずかなりの被ばくをすることは増殖ストップが頻発することであり、修復および複製機構への影響はそれだけ大きくなる。

一回の分裂増殖の周期を細胞周期というが、呼びこのメカニズムに興味のある方は参考資料2には図で説明されているのでご覧ください。

生殖細胞の場合、卵子のDNAと精子のDNAはそれぞれ減数分裂して半分になっているが減数分裂過程や精子障害については次回述べる。

参考資料
1: http://sorakuma.com/2011/09/12/3675
2: http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/replicat.htm

横浜市でストロンチウム90が195ベクレル/kg検出

  • 2011/10/10(月) 20:54:46

タイトルはガラパゴス島に住む日本の放射線専門家と書こうかと思ったが,
横浜市のストロンチウム測定値の報道は新聞にはなかったので、表題を採用した。

私はこのことには驚かない。何故なら3月18日頃からアメリカ西海岸(アラスカ、ハワイ、グアムも含む)各地16か所で、過去20年来で1度も測定されたことのなかった高濃度のストロンチウムや高放射能粒子のプルトニウムなどがアメリカ環境保護局(EPA)で測定された。この情報はRadNet<セシウムなどのγ線は2時間ごとに公開される。α、β線核種は核種を分離するので1-2週間測定に時間かかる。>というWeb上に4月に公開された。

3月爆発直後、放射線専門家がプルトニウムは重いので、原発敷地より遠くには飛ばないと言った言葉が新聞報道されたので多くの国民は信じたようだった。
<この言葉により私は放射線のブログを書く決心をした。放射線専門家なるヒトの説明は今もひどいが、当時は本当にひどかった。例えば、T大の放射線専門家は講演会で低線量放射線は浴びれば健康になるし、放射線は安全だ、安全だの一点張りで限界は話さなかったので質問したら、1時間1000mSvまで安全だと話した。このYouTubeは掲載されるとすぐ削除されたが、たまたま私は見た。重箱の隅を突っつくような間違いは報道しても、重大な人命にかかわるような間違いでもあまりにも大きな間違いになると沈黙するのが日本のメディアの特徴と思った。>

9月になってまもなく週刊誌で飯館村に大量のプルトニウム降下と報道され、9月末には文科省も公表した。

ところが、9月30日、NHKテレビで放射線医学研究所の専門家が東京にはストロンチウムは飛んできていないと断言したとのことを今日ユーチューブで見てびっくりした。東京での測定結果があるならば、いつ、どこで、計ったか根拠を示すべきだがその説明はなかった。

専門家がストロンチウム89は2000兆ベクレル、ストロンチウム90は140兆ベクレル放出されたことが官からも6月報告されていたので知らなかったことなどあり得ない。
またストロンチウムは1384℃で気化することから爆発時には一部気化していただろう物質が敷地外へ飛散しないなどと専門家が考えることは想像できない。
また意図的にウソをつくメリットも想像できない。原子力村住民の談合だったのだろうか?しかし、そんなことはあり得ないように思う。
結局、専門家は外界と遮断されたガラパゴス島に住んでいるとしか考えられない。

横浜市港北区マンション屋上でストロンチウム90が195ベクレル/kg検出された。米ソ核実験の影響によるバックグランド値は1〜2ベクレル/kgとのことだった。 屋上という特殊なところなので、平均的な数値を知るにはもっと測定しなければならないが、いずれにしても半年も経過したので、降下(fall out)した量など概算で予測するくらいである。

現在政府は海に流れたストロンチウム以外全く無視している。
横浜まで飛んできたストロンチウムは恐らくセシウムの分布と類似した状態で飛散しているに違いない。
政府は至急、東京をはじめ、各主要地域で測りセシウムと相関性があるか明らかにする必要がある。もし、概略セシウムと類似しているならセシウムとの比率から類推することも可能になるであろう。そうして得られたエビデンスを基に食品規格まで考えるべきだ。
さもないと、セシウムからは予想できなかった以上の白血病患者が発生するであろう。

何故なら、ストロンチウムを内部被ばくすれば、骨に沈着し、生涯被ばくし続けるのでICRPによるシーベルトの値を300倍しなければならず、その影響は大きい。
ECRRのバスビー博士は日本ではあまり知られていないが、アメリカおよびイギリスでの被ばく裁判では40連勝中である。その理由はDNAが登場する前にできたICRPの理論では現在のゲノム科学に通用しないことである。

少し前まではチェルノブイリより軽度と思われていた被害が、今やチェルノブイリを超え、史上最大の惨劇に至ると看做す人が海外では増えてきた。

この理由は、セシウムを調べるだけで、高放射能粒子も、ストロンチウムも測定しなく、子供の避難もさせない日本の放射線問題に関する取組からきていると思う。第二次大戦中に英語の使用を禁止し、敵の戦力を分析しないで、竹ヤリ精神で勝てると考えたあの当時と現在は非常に類似していると思う。
あの当時はB29爆撃機が焼夷弾を落とし、グラマン戦闘機が機銃照射をしたのでその怖さを体験したので、小学生でも戦況を理解できた。しかし、放射線は五感で感知できず、情報統制すれば暫くの間は平穏に過ごせるかもしれないが、人口減少の加速が起こり出した時、あわてても手遅れだ。今から先手、先手と事態を正確に把握し、最善の対処するか二つの道しかないことを強調したい。

放射線の生物への影響はDNAを介するー2

  • 2011/10/07(金) 20:29:04

2.放射線のDNAに影響を及ぼすメカニズム
除染問題、福島県民健康調査などいろいろ書きたいことはあるが、DNAに及ぼす影響の連載を始めたのに回り道ばかりでは続きを期待しているヒトに申し訳ないので書くしだいです。

日本語で放射線の作用と言う時、電離作用という言葉も一緒に使うことはあまりないが、英語では必ずといっていいほど電離放射線(inonizing radiation)というので、その意味も合わせ、また放射線の生体への影響の根幹はDNAに対する作用なので基礎から説明します。あまり正確に覚えていただかなくてもイメージが残ってもらえればと思う。

はじめに学校で学んだ化学のおさらいをします。食塩は塩化ナトリウム(NaCl)といわれるようにナトリウムは電子を与えプラスイオン化し、塩素は電子を受け取りマイナスイオン化し、二つの原子は最外殻を回る電子の軌道を共有する分子となる。これが化学におけるイオン化した分子であり、電荷の総和はゼロであることから安定している。

一方、放射線による電子が細胞の中を通過する場合は、電子が走る道筋(トラックという)に沿って、周辺の分子との間に相互作用が働いてエネルギーがばらまかれる。ここで放出されたエネルギーはトラックの近傍にある原子や分子に吸収されて、その結果、励起(電子の軌道が高エネルギーレベルに上昇すること)や原子や分子からの電子放出が起こる。通常の化学反応と異なる点は、放射線によって原子がエネルギーを吸収した場合にはどんな電子(最も外側の軌道にあるもの以外の電子)でも放出される点である。そうした原子や分子は「ラジカル」と呼ばれ、電荷の総和はゼロでなく、極めて反応性が高く、不安定である。ラジカルの中には水溶液中でわずか100万分の1秒の寿命のものもある。

放射線の生体への障害作用は、この電離作用によって、細胞内のDNAを傷害することによって引き起こされる。傷害機序は、電離作用によってDNA鎖が直接的に傷害される場合と、電離作用によって生成されたラジカルなどによって間接的に傷害される場合の二種ある。

DNAは遺伝子の構成体であるため、DNA鎖の損傷は、遺伝情報が損傷したことを意味する。DNAは2重のポリ核酸の鎖からなっているが、その片方だけが書き換えられたのであれば、塩基の対の相手は決まっているので、酵素のはたらきにより、もう一方のタンパク質の鎖を雛型として数時間のうちに修復される。

しかし、2本の鎖の同じ箇所が書き換えられた場合に修復はきわめて難しくなる。修復が不可能な場合は、アポトーシスが働き(プログラムによる)細胞死が起こる。DNA鎖の損傷がごく軽度のため正常と誤認識するか、修復の誤りを正しいと誤認識(この確率は1億〜100億分の1)すれば細胞は生き残る。
DNA鎖が損傷したまま細胞が生き残り、損傷が固定化された場合、細胞の活動が異常化し、癌や白血病を引き起こす場合がある。この場合には確率的影響というが、自然に浴びる放射線で起こる場合との識別ができない。

放射線に被曝した場合、特定の器官において多数の細胞がプログラム細胞死を引き起こし、急性の身体障害を引き起こす。この場合確定的影響という。この作用は細胞分裂の回数の多い細胞(骨髄にある造血細胞や皮膚の上皮細胞など)ほど、放射線の影響を受けやすい。逆に細胞分裂が起こりにくい骨、筋肉、神経細胞は放射線の影響を受けにくい(ベルゴニー・トリボンドーの法則)。

確定的影響は直接被ばくの場合、かなり大量でなければ影響は認められないが,内部被ばくの場合には至近距離に放射性物質があることから、たとえばストロンチウム90の場合、ECCRの議長であるChris Busby博士(参考資料1)によれば外部被ばく1mSvは内部被ばく300mSvに相当する。従って、ストロンチウム90を1mSv内部被ばくしたとICRP計算で算出された場合には、実際の影響は300倍も大きいと看做す必要がある。ICRPの計算では粒子が具体的にどこに入ったかは関係なく、あくまで均一なモデルから計算により求められるのに対し、ECRRは疫学的事実にもとずいてICRP数値に対応させたことから、大きな違いが生じた。

参考資料1. http://www.globe-walkers.com/ohno/interview/busby.html

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