アメリカは原子力発電廃止方向に進みだした模様

  • 2013/03/16(土) 10:54:07

現在アメリカにおける電力の総発電量の2割を原子力発電が占めている。しかし、1979年のスリーマイル原発事故以来、新規の原発建設が30年間凍結されてきた。ブッシュ政権の時に「地球温暖化問題」の国際騒動を追い風に「原子力ルネサンス」が提唱され、原発建設の再開が模索されつつあったが安全性と採算性、核燃料処分地などの問題があり、停滞してきた。

アメリカ原子力規制委員会(NRC)は福島事故2周年の3月11日にメリーランド州のカルバートクリフス原発3号機について、建設許可を出さないことを決定した。同社は以前、米国の電力会社コンステレーションエナジー社と、フランスの政府系の電力公社の合弁会社だったが、2010年にコンステ社が原発の採算見通しの悪さを懸念して合弁から撤退し、仏公社単独の子会社となっていた。ところが、米国は、原子力エネルギー法で、外国人が単独で原発を保有することを禁じている。従って、今回の決定は同盟国でも法律を厳格に適用したとも解釈できる。

しかし、次の3つの理由で原子力発電撤退に進む前触れのように思える。
1. 原子力発電は高コストで採算が合わないということである。アメリカでは電力の自由化が進んでおり、値段の競争が激しく、総原価制度に守られ、競争のない日本の電力代はアメリカと比較すると2−3倍高い。その上に、安価なシェルオイルガスの採掘量が最近急ピッチで増えてきて原子力産業はアメリカでは採算競争上での完全な敗者になった。

2. 福島原発事故の影響が次第に明らかになるにつれ、安全基準がより厳しくなってきており、安全性への投資をしなければならなくなってきた。この面からも採算性が悪くなってきた。

3. 長い間アメリカでの原子力発電所の建設がなかったためか、原子炉メーカのウエスチングハウス社は東芝の小会社となり、GE社は日立製作との提携となったが、GEの原子力部門は縮小しているので、今や実質的に日本が牛耳っているといっても過言ではないだろう。
このことは原子力発電から撤退してもアメリカのメーカに及ぼす影響もほとんどないことを意味する。

小児甲状腺がんは全国的規模に拡大を示唆する論文が公表

  • 2013/03/11(月) 11:24:48

環境省から報告された速報を基に考えた結果を昨日書いた。A2判定についてはA1との境界値が決まっていないので主観で動く、よって境界値を決めるべきと書いた。
しかし、基準がはっきりしているB判定が44人いたことについて、12年前の長崎の結果とそれから山梨県に降下したヨウ素131の量が福島の1/84であることなど、これらの結びつきはいくら考えてもわからなかった。
但し、福島の4万人弱で10人の甲状腺がんの事実を否定できるのは検査対照を一桁あげない限り言及できない旨書いた。

今朝、大沼安史ブログ(リンク7番)をみたら、その謎がほぼ解けた<残っているギャップは先天的甲状腺機能不全と甲状腺がんの相関性>ことに気付いた。

ニュヨークアカデミーから「チェルノブイリの大惨事を」出版された著者らが小児科医誌(参考論文1)に公開された論文<全ページで9ページともに無料でダウンロードできる>の概要「」があったからです。

「福島原発事故後(2011年3月メルトダウン翌、翌日から4月12日まで)アメリカ西海岸地域(5州)に沈着したヨウ素131量は通常の211倍に増加した。
西海岸地域(5州)で2011年3月17日から同年12月31日までに生まれた新生児の甲状腺不全率はその前年の同時期に較べて16%増加した。一方、同時期残りの36州では3%減少した。二つのグループ間における最大のギャップは3月17日から6月30日に生まれた新生児で28%であり、其の時の危険率は0.04(100回のうち間違える確率が4回あると言う意味)であった。
他の国々における解析結果も非常に重要であるとも述べている」

アメリカの太平洋岸の州で放射性ヨウ素の沈着量が211倍に増えた州があったということは、アメリカまで飛んで行く間に薄まり続けるので、通常数千倍まで薄まることが多い。ヨウ素の場合の希釈率は知らないが、アメリカまでの距離を規準に日本における各地域との距離関係から考えれば、長崎市といえども通常の何千倍に増加していたであろうことは容易に類推できる。

即ち、環境省のB判定の子供が長崎でも多いから安心しなさいでなく、日本全体(沖縄まではわからないが)の子供に甲状腺異常が起きているので、注意して検査など勧めるべきだという、逆のことが示唆されている。

わが国の甲状腺学会もこの問題を無視するのでなく、解明に取り組むべきだ。
何故なら、今後アメリカでは甲状腺がんがヨウ素由来によるか否かの遺伝子レベルでの研究が急速に進むであろう。ヨウ素131由来が証明されれば多額の賠償問題に発展するであろう。

参考文献1.本文献は無料で誰でもダウンロードできます。
Joseph J. Mangano, Janette D. Sherman;Open Journal of Pediatrics, 2013, 3, 1-9 OJPed
doi:10.4236/ojped.2013.31001 Published Online March 2013 (http://www.scirp.org/journal/ojped/)

子供の甲状腺異常検査の対照群データを読んだコメント

  • 2013/03/09(土) 20:50:52

甲状腺検査結果についてはNHKから詳しい報道があったということで、まず整理した。
環境省発表資料よりNHK報道資料(詳細な結果は今月末発表)が詳しく本報道{ }と昨晩の時事通信の情報を較べると、青森県の地名とB判定者数がわからなかった。従って、青森県ではむつ市または三沢市のケースも想定に入れてしまった。それで改めて書く次第です。

{対象者は次の地域の3-18歳児、青森県弘前市、山梨県甲府市、長崎市
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
A1判定 結節orのう胞なし   1852人   /4365 =42.4%
A2判定 結節orのう胞あり*   2469人   /4365 =56.6%
B判定 結節orのう胞あり**   44人   /4365 =1.0%
C判定                 0人
―――――――――――――――――――――――――――――――――― 
 *:5.0mm以下の結節や20.0mm以下ののう胞
**:5.1mm以上の結節や20.1mm以上ののう胞 
その結果、検査した3歳から18歳までの合わせて4365人のうち、福島の検査で確認された小さなしこりなどが56.6%で見つかり、福島県とほぼ同じ傾向だったということです。 これについて、環境省は「福島の結果が原発事故の影響によるものとは考えにくいことが分かった。この結果が不安の解消につながることを期待したい」と話しています。}

NHK報道でこれだけの情報があれば後不足は地域ごとの割合と年齢別の割合しかない。
しかし、両方とも総数を出すときは個別の値がまずあって、エクセルならΣを押すだけである。何故一緒に報道せず、小出ししようとするのか不可解である。
考えられるのは地域差があまりにも大きかったので考察の時間が必要なのかとも想像した。

今回のデータを見ての私のコメントを以下に書く。
1. 福島の子ども4万人弱の甲状腺エコー検査により、甲状腺がんが゙10名(穿刺細胞診なので病理学専門家によるものとみなす)発症したエビデンスは重く、今回実施した4500人による少数例の結果からは発がん性まで言及できない。今回の目的は甲状腺異常率が高いことの比較のためである。もし発がん性について疫学的に証明しようとすれば後10倍くらい例数を増やす必要があろう。
従って、今回の甲状腺異常率の問題とは切り離して、甲状腺がんからの転移防止に向け、引き続き甲状腺がんの早期発見に努めなければならないことは明らかである。

2.A1判定とA2判定の基準の境界を明確にする。
A2とB判定の境界は明確であるのに、A1とA2を区別する境界値が設定されてない。現行はA2が5割を超えてはスクリーニングの効率が極めて悪いし、過剰な心配を与えることにもなる。
また、境界がはっきりしていないために個人差が出やすく、例えば0.5mmの結節でもA2に判定する人もA1に判定するヒトも居るかもしれない。またあまり小さなのう胞からのすぐに癌化する可能性も低いであろう。

以上の理由により、結節ならばA1判定は例えば、2.0(*)mm以下、のう胞なら5.0(*)mm以下とする。

A2規準は結節ならば5.0mm以下で2.1mm(*)以上、のう胞ならば20.0mm以下で5.1(*)mm以上のようにすべきと思う。

上述の*の数値は仮の値として提議したまであり、専門家が討議して、国際的にも通用するような値を決めてもらえればと願う。

3.12年前の長崎市の子供との違いがなぜか?
山下教授らが2000年実施した例では「のう胞」248人中2人であり、しこりはゼロだった。12年の間に甲状腺エコー装置の精度が画期的に向上したわけではないので、この落差の原因として何かある筈である。この件に対する専門家からのコメントが必要であろう。
そのほか、山梨県のヨウ素131の沈着量は福島の1/84しかなく、残りの2市の降下量は更に少ないので原発事故との相関性のない、単なる甲状腺異常の問題であろうが、それにしても原因の想定は難しいように思える。

核融合実験炉からの高速中性子の制御はできない

  • 2013/03/05(火) 21:15:32

タイトルの言葉を正確に書けば「核融合実験炉で発生する中性子のエネルギーは、原発・原子炉で発生する中性子エネルギーの10倍なので、それを防ぐ方法がない事が問題」という文です。岐阜県土岐市の核融合研究所が取り進めようとしている重水素実験において、放出される高速中性子の危険性について、ノーベル物理学賞受賞者の小柴昌俊元教授が多治見市長あての手紙に書かれたとのことです。

ブログに書きたいネタはいろいろあるが、戦線を広げては終始がつかなくなる思いがあり、原発事故後は放射線被ばくを中心に書くように心がけてきた。
しかし、どうしても本記事を書きたいという思いがあった。それは本主張が2002年ノーベル物理学賞受賞者の小柴昌俊先生がされたということです。

海外なら住民に被害の恐れがある場合には、著名な専門家が発信することはよくあることです。ところが、日本ではほとんどの場合において、専門家は住民と国の利益が相反すれば国にマイナスになるようなことに対しては沈黙する。発信するのは自分の研究領域が影響を受ける時ぐらいしかないであろう。

今回の原発事故において一例をあげれば、細胞膜は最外殻電子が一個の金属であるナトリウムイオン、カリウムイオンはそれぞれ独自のチャンネルを有するのに同じ一価のセシウムは専用のチャンネルが存在しない。従って、3者の細胞膜通過に関しての差は明らかであるにもかかわらず、今回の原発事故後、電気生理学者の発言を聞いたことがない。また遺伝学者、ゲノム研究者、生化学者からの発言もなきに等しい。
このような最近の現状において、著名な物理学者が住民のために声をあげたことは画期的な出来事であったので書く次第です。

中性子被ばくといえば、東海村での作業員が多量のウランをバケツに入れたために臨界反応が起こり、放出された中性子により作業員が死亡したことは周知のエビデンスである。
従って、10倍も速い中性子に被ばくすれば大変な事態になろうことは誰でもわかる。
また、特に今回は、東日本大震災の復興予算を使ってやろうとする便乗式であり、ドロナワ式に見えるので、実にケシカランことだと思う。

実験をするなら何より安全性に配慮すべきなので、ヒトが影響を受けないような場所で行うべきだ。また地震国日本で核融合実験を本当に安全にするごとができるか検討すべきだ。不適切ならば、日本でなく、海外すれば済む問題だ。
核融合エネルギーを目指してわが国も半世紀以上前から基礎検討を重ねてきたがほとんど進展がなかった。今ではフランスが一番(2011.9.11ブログに書きました)進んでいると思うが。それでも、まだまだ実用化には長い年月を要するであろう。

茨城、栃木、宮城、埼玉、東京の甲状腺エコー検査もすべき

  • 2013/03/03(日) 23:33:08

放射性セシウムについては福島県に降下した量と福島を除く日本の降下した量がほぼ同じだったように記憶している。それに対し、放射性ヨウ素は風向きの関係で南の方に多く飛んだので、隣の茨城県には福島県に降下した量の半分近くが降下した。しかも、福島県より濃淡差が少ない状態で降下した。

国立環境研究所が2011年3月11日から3月30日までの間に降下した放射性ヨウ素131の沈着量を論文(参考資料1)として公表された。
この原資料を埼玉県で教師をされている川根真也先生が視覚的にも理解し易いグラフに編集されたので紹介(参考資料2)します。

乾性および湿性の両方を合わせたヨウ素131の沈着量を、平方メータあたりのベクレル数で概数を示すと、1番は福島県の85万Bq/m2、2番が茨城県の38万、3番が栃木県の18万、4番が宮城県14万、5番が埼玉10万、6番が東京の8万であった。タイトルに書いたのはこの沈着量の順に従った。

福島第一原発から放出されたヨウ素は気化温度が184℃と低いため、地震による配管損傷部やベントなどにより早い時期から放出されたが、最も多量に放出された15日頃であった。

福島の子供の甲状腺がんは初年度でのエコー検査から10人(穿刺細胞診で)見つかった。2年度検査は今月(3月末)終わる予定なので実数は確定してないが約50人見つかりそうな情勢になった。
発がん率は閾値なしの線量と直線関係にあるとの考えが世界標準の考えであり、一方、これら地域に住む子供の数は福島県よりはるかに多い。従って、発がん総数が福島を超えるのは明らかであろう。

このようなエビデンスが出たからには、福島県だけでなく茨城県や栃木県などでも早急に甲状腺エコー検査が実施されるべきである。多数の子供を未検査状態に放置し、転移を許すことなどあってはならないことである。

参考資料
1. http://www.nies.go.jp/shinsai/Merge-2011GL048689-pip.pdf
2. http://www.radiationexposuresociety.com/archives/2486

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